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深「…阿部ちゃんって頑固だよね」
「…なに、突然」
ふっかはゆっくりと俺の肩を叩きながら話し始めた。
深「阿部ちゃんはねえ、頑固だから。1回決めたことは最後まで貫き通すでしょ」
佐「うんうん」
深「んで、1人でなんとかなる!って思ったことは絶対に俺たちに言わない」
佐「たしかに」
深「あんさあ、この世に1人でどうにかできることなんて無いのよ。…はっきり言うけど、俺、とたぶん佐久間は。お前が小さい怪我溜めてるのも、毎回用意されてるのと違う衣装着てんのも、なんで水がお前のだけ無いのかも。それで生活に影響出てんのも、全部わかってんのよ」
阿部ちゃんから言ってくれるの待ってたけど、そろそろ待てねえなと思って。
そう言ってふっかは、太ももの上でガチガチに握り締めていた俺の握りこぶしを優しく包み込んでくれた。
佐久間は自分のほうに肩を抱き寄せて、そのまま優しく頭を撫でてくれた。
近くにはいないけど、一部始終をじっと見ていた他のメンバーもきっと、優しく暖かい目で俺のことを見ているのだろう。
そんなメンバーの温もりを久しぶりに感じてしまった俺は、もう我慢なんてできなかった。
「…、っひ、」
深「つらかったなあ」
「おれっ…ぃ、いや、…だったぁ…!!」
佐「うん」
「やめて、ほしくてっ、…でも、っ…いえ、な…ひ、言えな、くて…っ」
深「ごめんなあ、もっと早く声かけりゃよかったわ」
「ぁ、ち、…ひ、ぐ…っちが、ぅ…!」
深「…阿部ちゃんやさしーねえ」
佐「『なんで気づかないんだよこのバカぁ!』くらい言ってもいいんだよ?」
深「うーん、それはそれで天使」
佐「やべえこいつ末期だ(笑)」
俺の両隣でいつものように会話をする佐久間とふっかの声に安心しちゃって、余計に涙が溢れ出てくる。
止めようとしても止められなくて何度も目元を擦るけれど、その動きは佐久間に止められてしまった。
大事なチャームポイントが腫れちゃうよ、なんて言って。
──────────────────────
その後犯人は特定され、解雇になったらしい。
俺のことを考えてくれているのか、メンバーが俺の前でその話を出さなくて又聞きだから確かではないけど。
生活も安定し、仕事にもしっかり集中できるようになった。
…でもメンバーはちょっと過保護気味になった、かも。
温もりはすぐそこにあった。
気づかずに我慢していたのは、俺が離れていたから。
離れていたのは、こっちだったのだ。
完
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香さん - しょっぴーのだてさんの呼び方を良太にするともっといいと思います (12月2日 20時) (レス) @page22 id: 5b7efd0466 (このIDを非表示/違反報告)
さんかっけい(プロフ) - みりぃ(緑璃)さん» ご感想ありがとうございます…!励みになります(_ _)今後も精進して参りますのでよろしくお願いいたします! (2022年12月22日 20時) (レス) id: 354f0ed835 (このIDを非表示/違反報告)
みりぃ(緑璃)(プロフ) - テンポのいい文章が読んでてとても心地良いです。これからも更新を楽しみにしてます (2022年12月22日 17時) (レス) @page44 id: e9c37a05cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さんかっけい | 作成日時:2022年12月4日 2時