おとなりさんのそらるさん。【歌 い 手】

おとなりさんその21 ページ23

＊そらる Side＊

　
「わぁぁ……！」

「これはすごい……」

　
電車に揺られること1時間半くらい。
そこから少し歩いたところにある公園、桜はほぼ満開だった。

　
「彼方さん、彼方さん！写真撮りましょ？」

「ん、いいよ。」

　
隣で笑っている彼女はさっきからテンションが上がっているのかいつもより元気だ。
2ショットに心を躍らせながらも、彼女に着いて行く。
結構有名なところなんだけど、平日ということもあり人は少なく
桜以外にもいろいろな植物が咲き始めている。

　
「綺麗ですねー」

「そうだね。」

「連れてきてくれてありがとうございます！」

「ううん、俺の方こそ。一緒に来てくれてありがとう。」


　
電車の中で、花見はもう何年もしていないといっていた彼女。
それを聞いて、本当に今日誘ってよかったって思う。
…いや、告白はしないよ？まだ…ね。


　
「彼方さん？」

「ん？」

「いや、私ばっかりはしゃいじゃってその…」

「いいんじゃない？それに…俺も結構テンション上がってるし。」

「そうなんですか？」

「そうだよ、それに…Aと見たかったから誘ったんだし。」

「あ、え…はい。」

　
ちょっとだけ攻めてそう言えば、顔を赤くした彼女にこれは期待していいのかなって思う。
そんな感じで花を見て回った俺達は、休憩がてら公園にあるお土産屋に来た。
公園…なのに、結構いろいろなのがあるなぁ。

　
「色々ありますねぇ……みんなに買っていきます？」

「そうだねー」

　
そんな会話をしながら店内を回る。
雑貨のところで、ふと目をやれば桜をモチーフにしたグッズが色々あった。

　
「へぇ…おしゃれですね、これ。」

「そうだねぇ…そうだ、買うならどれがいい？」

「へ？そうですねー…あ、このプレスレット可愛い…」

「どれどれ…へぇ、金具じゃなくてこれ紐なんだ。」

「ですねー…って彼方さん？それを手にどこに？」

「どこに…って、レジ？」

　
名前が選んだのは淡い水色の紐に桜をかたどったガラスが付いている
シンプルなデザインのブレスレットだった。それと同じデザインで黒い紐のモノと一緒に
レジに向かおうとすると、なぜか止められた。

　
「彼方さん、私の買おうとしてません？」

「自分のも買うよ？」

「そうじゃなくてー…」

「いいから、買わせて？今日一緒に来てくれたお礼。」

「…じゃあ、彼方さんのは私が買います。今日誘ってくれたお礼です。」

　
そう言って笑う彼女には敵わなかった。

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