堕ちる 7 ページ7
ゾム様と別れ、孤児院へと足を進めていると、突然異臭が鼻をつく。
「なに…この匂い…」
孤児院に近づく程、その異臭は強まる。
何かが焦げたような匂い。
周りには白い煙が薄く立ちこめている。
私は弾けたように走り出す。嫌な予感がした。
「マザー…皆っ…!」
この嫌な予感が私の勘違いである事を願って走っているうちに孤児院に着いた。
私は手から籠を落とした。
真っ赤な林檎が転がる。
真っ赤な林檎が転がっていった先には真っ赤に燃える孤児院があった。
頭が真っ白になる。
落とした真っ赤な林檎にも勝る目の前の赤に私は崩れるように地べたに座る。
何が起きているのか分からない。
分かるのは頬に伝う涙の感触だけ。
「なん…で…」
情けない声が口から零れる。
「さぁ、なんでだろうな」
背後からとても低い声がした。
私はその声に振り向く。そして私は目を見開く。
そこには我々国の総統。グルッペン様が居た。
一国の総統である彼がなぜここに…?
「あぁ、可哀想に。花壇も帰る家も大事な家族も全て燃えてしまって…泣かないでくれ、乙女に涙は似合わない。あぁ…!だが、泣き顔も素晴らしく美しい…!」
愉快な声色、わざとらしい口調、心底楽しそうな顔。すぐに分かった。この人が主犯だという事に。
「どうして…どうしてこんなこと…」
分からなかった。どうしてこんな事になっているのか。彼が何をしたかったのか。
「どうして?そんなの決まっている」
グルッペン様が私にゆっくりと近づく。
底知れぬ恐怖が私を襲う。紅い瞳に見られているだけなのに身体が動かない。後退り出来ない。逃げれない。
そしてグルッペン様はとうとう目の前に来ていて耳元でこう言った。
「お前を堕とす為だ」
瞬間、後頭部に凄まじく強い衝撃が走る。
全身の力が抜け、グルッペン様に寄りかかるように倒れる。
「あ…う…」
「今は少し眠っていろ。次に目が覚めた時、何もかもが変わっている。だが、安心して眠れ。私達がお前を抱き留めてやる。だから堕ちてこい、A」
その声が聴いたのを最後に私の視界は暗くなった。
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明日花(プロフ) - このようなめっちゃめちゃいい作品があるからこのアプリはやめられない!読み終わったあとすぐ一番右のお星様を押しちゃった、、、好きです! (2022年2月13日 7時) (レス) id: 6f8c950d7b (このIDを非表示/違反報告)
シュネー - あ、もう、好きぃ……………。は?もうストライクスリーアウトなんだが。最高かよ。(褒めてる) (2022年1月24日 22時) (レス) id: 1ee7840ed0 (このIDを非表示/違反報告)
陽華 - いつか、pink物となる。私の予感 (2020年9月22日 12時) (レス) id: 4fefb0da81 (このIDを非表示/違反報告)
月夜の散歩 - ドストライクすぎて逆に鳥肌…。めっちゃハマります!あ、お星さまちゃんと右端押しときました! (2020年5月19日 22時) (レス) id: 7ad76e25a2 (このIDを非表示/違反報告)
ももか(プロフ) - ドストライクな小説(^ω^)主人公の年齢ってどのくらいなんですか? (2020年5月19日 10時) (レス) id: 7fd9de27a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:KIBA | 作成日時:2020年5月1日 18時