君の声が聞こえなくなる程夢中で空を泳いでいた ページ2
*
ふっと意識がはっきりすると大好きな彼が、
嫌いだと言っていた黒い服を着て、
床に座り込んで泣いている姿が見えた。
どうして泣いているんだろうか、何故あそこまで嫌いと言っていた黒い服を着ているのだろうか、
今の私には理解出来なかった。
いつも通りなかないで、と頭を撫でようとすると私の腕が彼の頭をすり抜ける。
そこでようやく分かった。
ああ、私死んだんだ
母親も父親も兄弟も姉妹もいない私にここまで悲しんでくれる人がいると少し嬉しかったけど、
私は彼を泣かせた私を許せなかった。
少しずつ、記憶が頭に流れる。
交通事故に巻き込まれて、運ばれる時に私は彼に言った。
「ちょっと寝るからさ、起こしてよ」
彼はきっと毎日私に声をかけたのだろう。
けど、私は空でも飛んでいるように起きず、
そのまま…
なかないで。と言いたいけど、
私が泣かせているのと変わらないから何も言えない。
触れられない彼の頬に手を添えると、
温もりを感じる。
頬は痩けて目の下はクマが酷い。
肌は青白く、生きているかどうか不安になる程、生気が無かった。
この浮いている足を床につけられたらどれだけ良いか、
彼のことを抱きしめ、頭を撫でてあげられたらどれだけ良いか。
考えるだけでもつらい。
今の私は、
可哀想と、涙を流してあげることすら出来ない。
笑って慰めてあげることも出来ない。
お腹が痛くなるほど笑わせることも出来ない。
泣かないでと今の私が言っても彼に届かないだろう。
今の私に出来ることは、何も無い
*
鏡に映る貴方はだあれ？→←雨音が響く中少女は1人孤独の海に溺れる
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作者名：小路 すみれ | 作成日時：2021年5月2日 13時
