拉麺 ページ4
.
喫茶店を出るとすぐ外に古びた階段がある。
石のしっかりした作りだが、蔦がコンクリートから生え、それがまた味を出している。
1階に降りるとこれまた少し懐かしい雰囲気を感じるラーメン屋があった。
この建物は1階にラーメン屋、2階に喫茶店がある。
『…ここのラーメン、気になってたんだよなあ。』
実は引っ越した当初から密かに目をつけていたラーメン屋。
面接が終わり時刻は15:45。
準備にバタバタしてしまいお昼ごはんを食べ損ねていたことを思い出した瞬間、お腹がわざとらしく音を立てた。
気付けばわたしは吸い込まれるようにその店へ足を踏み入れていた。
「へいらっしゃーい！何名様で！！」
『あ、一人です。食券はこれで、』
「あいよーうっ！鶏白湯いっちょ！！」
…随分と威勢のいいというか、なんというか。
いかにもなラーメン屋の店主、といったテンションに若干たじろぎつつも、わたしは店の奥のボックス席に腰を下ろした。
カランカラン、
「おー！！悠仁！！今日もリハ終わりか？？いつものでいいかー？？？」
店主の大きな声にびくつき、慌てて入り口に目をやるとそこには青年が立っていた。
スパイキーショートの金髪は前髪を真っ直ぐ切りすぎたのか、オン眉みたい。
春先にも関わらずよく焼けた肌と通った鼻筋、とろんと垂れた切れ長の目は俳優のような雰囲気を感じさせる。
『…綺麗な顔だなぁ、』
思わず小さな声で漏らした。
熱気溢れるラーメン屋の騒音に掻き消され、誰の耳にも届かなかったが。
「ん、焼豚ちゃんと3枚乗せてよね。」
静かにその青年は不貞腐れたように、でも口角を上げて呟いた。
悠仁、と呼ばれたその青年はわたしの座るボックス席のすぐ前にあるカウンター席に腰を下ろした。
広い背中を視野に入れながら、静かに鶏白湯麺を啜った。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 173人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Rq | 作成日時：2025年2月7日 11時
