その音柱、誘拐犯。【宇髄天元】

伍 ページ6

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コンコン


数日に一度、必ず日が暮れてから聞こえる
扉を叩く音。





『…地味』


｢……派手｣




扉を叩く音がしたら、それが私たちの合図だった。


“地味” と “派手”


普通なら川と山みたいなものだと思うけれど、
何故だか天元は嫌だと首を横に振った。

そして “地味” と言うのも嫌だと言うものだから
自然と私が地味担当になった。


地味担当なんて、と最初こそ思ったものだが
確かに私には何も無い。

“地味” という言葉は今の私によく当てはまると思った。上手いこというものだ。天元も。








｢今日はこれな、｣



そう言って背負っていた風呂敷を床へ降ろし
結び目を解けば現れるのは数日分の食糧。


数日分、と言っても今までの生活から比べれば
多く見積っても僅か二日分程の量だった。





｢…悪ぃな、いつも少なくて｣


『ううん、大丈夫。ありがとう』




日々任務に明け暮れる天元だけど、
その報酬の大半は親の懐へと入る。



その頃は私も天元も十を過ぎたばかりの子供で、
むしろ天元はよく私の面倒を見てくれた方だと思う。



だからこそ、手に職もなく
他に頼れる人もなく
一人でひっそりと生きる私にとっての天元は

神様のような人だった。






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