□帰ろう ページ44
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私を止めるカラ松さんに「一松くんから連絡あったら教えてください!」と言って松野さん家を飛び出したはいいけど、よく考えたら一松くんの居場所なんてまるで見当がつかない。
日も傾いていてだいぶ暗い。
私はほとんど意味をなしてない傘を片手に「一松くーん!」と呼びながら探す。
「……どこ行ったんだろ」
どこかで雨宿りしてるっておそ松さんは言ってたけど、猫を連れたまま雨宿りできるところなんて…。
パチンコ屋さんだってゲームセンターだって、近所のスーパーだって全部ペットは立ち入り禁止のはず。
「……一松く…うわ!」
ぶわっと強く吹いてきた風に、傘が飛ばされて行ってしまった。
私は井矢見さんに借りた傘を追いかけると、ピカッと雷が光った。思わず耳をふさぎながら傘を捕まえると、横には赤塚公園。
「公園か…」
「一松くーん!」と呼びながら公園の中に入ると、小さくニャーと猫の声がした。
「…………」
猫の声を頼りにひょこっと遊具の中を覗けば、猫を抱いてしゃがみこんでる一松くんがいた。
私がほっとして笑いながら「一松くん」と呼びかけると、びくっと肩を跳ねさせて小さく私を見上げた。
「……なんでアンタ…」
「おそ松さん達に一松くんが帰ってないって聞いたから」
「無事でよかったー」と笑うと、ふいっと目線をそらして黙り込んでしまった。俺に構うなオーラがものすごいけど、ここに放っておくわけにもいかないし…。
「一松くん、帰ろ」
「……俺はいい」
「危ないよ?風ひどくなりそうだし…」
「…ほっとけよ」
「帰りたくない」と小さく呟くと、私にしっしとやる一松くんは、案外強情で。
でも、一松くんはきっと抱いてる猫をこの台風の中外に1人で出しておくのが心配だったからこういう結果になってしまったんだろう。
私は少し考え込むと、一松くんの腕をパーカー越しにぐいっと掴んで無理矢理遊具の外に出す。
「ほっとけって言って…!」
「……うち、来なよ。お兄さん達には言っとくから」
「…は、なんでお前の家…」
「その子、だいぶ寒そうだよ?」
一松くんの腕の中の猫を指差すと、一松くんは少しだまりこむ。「猫だけじゃなくて、一松くんも、だいぶ冷えちゃってるし…」と困ったように笑いかけると私から傘を奪い取るように受け取って私の上にさしてくれる。
2人で並んで家の方へ歩き出した。
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