□チーハン ページ22
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「十四松くん、この前はなんで川でバタフライを…」
家の方に向かってゆっくり歩き始めながら十四松くんの方を向くと、いつの間にかふらふらと逆方向にむかっている十四松くん。
「ちょっと!なんでまっすぐ歩けないの!?」
「いや、こっちから美味しそうな匂いが…」
「しないから!帰るよ!」
十四松くんの伸びきった袖を握って家の方向に引っ張っていると、なにを思ったのか十四松くんは袖から手を出してきゅっと私の手を握った。
「行くぞぉー!」
「や、ちょ、十四松くん!?」
「こっちから六つ子反応受信!」
「は、はい!?」
私の手をぐいぐい引っ張って、向かった先はまるで見当違い。
「十四松くん…」と言いかけるけど、「ほら、いた」と着いた先には自転車とともに倒れこんでいるカラ松さんが何故かごみ捨て場にいた。
「か、カラ松さん!?」
「…か、カラ松ガール」
「え、も、もしかして今朝からずっと…」
「腹が減って力が出ない…」
「……………」
顔色の悪いカラ松さんを見て、私は倒れていたカラ松さんの愛車に 跨って「十四松くん!」と十四松くんにいう。
「カラ松さんを担いで自転車の後ろに乗って!」
「ラジャー!」
「え、…ちょ、おい…」
「帰りますよ!そしてお腹いっぱい美味しいもの食べさせてあげますからね!」
顔色の悪いカラ松さんに笑って言えば、びっくりしたような顔をした後「チーズハンバーグ…」と言うミスマッチなリクエスト。
「任せてください。カラ松さんは私の公務員としての命の恩人ですから!」
後ろにカラ松さんを担いで乗った十四松くんの「いぇーい!しゅっぱーつ!」という掛け声で、私は松野家に向かって自転車のペダルを漕ぎ始めた。
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「……し、死ぬ…」
「A主任!カラ松さんの意識が危ういです!」
「じゅ、十四松くんはカラ松さんにお水を!」
「ラジャー!」
死にそうになりながら辿り着いた松野家の前でうなだれながら、楽しそうな十四松くんに指令を出す。
途中で寄ったスーパーで買ったハンバーグの材料を持って、蒸れたコートを脱ぎながら松野さん家の台所にお邪魔する。
「よし!」
スーツのブラウスの袖をくるくる〜っと捲って、手を洗うと、材料をビニール袋から取り出す。
「Aちゃん!エプロン!」
「あ!ありがとう」
十四松くんに渡された緑の松の模様のついたエプロンに身を包むときゅっと後ろの紐を蝶結びした。
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