夏の星 ページ11
平々凡々な私の毎日は、変わらないと思っていた。
中学生になっても、高校生になっても、大学生になって一人暮らしを始めても。
朝起きて、ご飯を作って支度をして大学に行って、講義が終わればやっと慣れてきたバイトに行って、何もない日は郁子ちゃんと買い物に行ったり大学で勉強をしたり、まっすぐ家に帰ってだらだら過ごしたりして、夕ご飯を食べてお風呂に入って寝る。
そのサイクルはずっとずっと変わらないって思っていた、のに。
「Aちゃん唐揚げ定食なんだね、うまいよね学食の唐揚げ」
にっこにこ。
音がしそうなほど眩しくてきれいな笑顔。
私には眩しすぎてそちらを向けない。
夏休みまで一週間を切った前期試験終了後の学食で、私は今日もどうしようと困っている。
困り過ぎてどうしていいのか分からなくて困っている。
「あの、松本くん‥」
「ん？ なに？ っていうか、潤で良いよって言ってるじゃん。俺もAちゃんって呼んでるし」
「え、えと‥‥」
じっと。音がしそうなほど迸るキラッキラの目力と、とりあえず濃いのに美しい相貌に言葉をなくす。
どうしてこんな、こんな‥‥大学一有名と言って過言ではないこの松本潤くんが、ちんちくりんでぽちゃで平凡の100乗みたいな私に興味を持っているんだろう。
っていうか、す、す、すすす好きって、言われたし‥‥。
松本くんは変わらずニコニコと私を見つめている。
吸い込まれそうな笑顔で、雰囲気も柔らかくって、見た目はオラオラ系の強面美形なのに全然違う。
松本くんの笑顔を見ているとふわふわする。頬がふぁーって熱くなって、なんでか涙も滲んできちゃって、ドキドキが止まらない。
「ん？ Aちゃん熱ある？ 真っ赤」
心配そうに逞しい眉毛を寄せて私を覗き込む顔はやっぱり王子様。
「それとも、俺に見つめられて赤くなっちゃった、とか？」
至近距離で内緒話をするように耳元で。いたずらな声音。
周囲が息を呑むのが分かった。
突き刺さる視線は好奇と嫉妬だ。グサグサくる。
もうすぐ夏休みで良かった。
「Aちゃん？」
大学がこんなに怖い場所だなんて、知らないままで居たかった。
五コマ目まで目いっぱい講義を入れた水曜日はバイトも無くて、私は図書館に向かう。
今日習ったところを復習したいし、色々調べたいこともある。
大学の図書館は講義が終わっても夜9時までは開いていて、私は重宝している。
それにここなら、人は多くないから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 301人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
お塩(プロフ) - トリコさん» トリコさん、きゅんきゅん確定でしたか？やった！おＪさんはこの後関係を深めていく間にきゅんきゅんどころかぎゅんぎゅんさせられまくります(笑)たまにはこんな世界もいいですよね、コメントありがとうございます！！ (2022年3月9日 14時) (
レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
トリコ(プロフ) - モデルちゃんのその後？中話？もすでにキュンキュン確定なお話じゃないですかー！ (2022年3月9日 10時) (レス) @page33 id: 412b010b6a (このIDを非表示/違反報告)
いみちぇん＆嵐大好きみよら(プロフ) - お塩さん» なるほど！理解しました！はいっ、待っておきますね♪チャットになっちゃったのでこの辺で失礼します！ (2021年12月27日 23時) (レス) id: 65097701c5 (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - いみちぇん＆嵐大好きみよらさん» 『世界は二人の〜』の掲載作品数が大幅に減ってしまい、2が空っぽになってしまった、という話なんです。どちらにしろ、今後短編が増えて行けばそのうち2も公開になりますので、気長にお待ち下さい。 (2021年12月27日 20時) (レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - いみちぇん＆嵐大好きみよらさん» 名前変換ミス教えてくださってありがとうございます！おいおい直していきますすみません。あと分かりづらくてすみません、『合鍵な関係』というシリーズが元々短編で『世界は二人の〜』に掲載されてたんです。で、合鍵シリーズが増えたので独立させた結果、→ (2021年12月27日 20時) (レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：お塩
| 作成日時：2021年10月10日 1時
