彼にとっても ページ6
ただ、これが恋かと聞かれると違うというのも解る。
なぜならAを抱いてみたいとか想像することが全くできないからだ。
それもまた松本にとって、よく解らないが気になる異性への反応としてはあり得ないこと。
「まぁ、迂闊なことしなきゃ良いとは思いますよ。俺だってみんなそれぞれ一般人の友達はいっぱいいるし。っていうか、潤くん彼女いるだろ！」
「あ、あー‥」
言われ、浮かぶのはもう数年付かず離れずで付き合っている同じ芸能人の恋人の顔。指摘されるまですっぱり頭から抜け落ちていたとは絶対に言えない。
「ほんとさぁほどほどにね。さーて、そろそろ出番だし行きますか」
「‥わかってるよ」
それが何に対しての了解なのか。
これ以上の会話はどちらにしろ進展などないし、収録も始まるので二人は控室を後にした。
「それじゃあ松本さんお疲れ様です、明日の迎えは10時です、ゆっくり休んでください」
マネージャーの運転する車がマンション前に着くと、松本は足早に部屋に向かう。
いつも通り長引いたバラエティの収録に疲れた身体は一刻も早く部屋に帰りつきたいと願っている。
エントランスを抜けて、エレベーターに乗り込んで、玄関に入って、そして真っ暗な室内で思う。
あの夜の、あの人は。
今よりもっと疲労困憊だっただろうに、よくぞあれだけ松本のために世話を焼いてくれたものだと。
(‥‥なんだよ、)
結局、Aからなんの連絡もないままのスマホは、相変わらず沈黙している。他の連絡なら沢山届くのに、失礼ながらどれもこれも今の松本に必要なものじゃなかった。
(マジで友達になれたみたいな、そんな感じだったの俺だけかよ)
子供じみているとは解っていても、思考はぐるぐると巡る。
解っているのだろうか、彼女は。
松本にとってもあの出来事はとてつもなく非日常で非現実的なことだったのだと。
どうしてなんてわからない。今も。
ただとにかく彼女に感じた引力みたいなものを手離していけないと思った。
それだけは確かだ。
その果てに、何が待っているかなんて今はまだ考える必要はない。
「‥‥くそっ」
くさくさした気分でそれでも風呂だけ入ろうと、スマホも荷物もまとめてソファに投げ出した松本は、気付かなかった。
二十二時過ぎ。
今まさに、音もバイブ機能も消して静まり返ったスマホの着信ランプが光っていたことに。
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お塩(プロフ) - ゆぃさん» ゆぃさん、一気読み疲れないですか？今後どんどん長くなる上に、どんどん何なのこの人たちってなるので(笑)ありがとうございますー！ (2021年10月3日 19時) (
レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
ゆぃ(プロフ) - 小出しもいいけど、一気に読めると尚嬉しいから 一気に出しても大丈夫ですよ~♪ (2021年10月3日 13時) (レス) @page29 id: 7a81be16ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年9月29日 1時
