＊ ページ32
ドキリとする。
(気付いていたんだ‥)
潤はもともと敏いところがある男だから、Aの変化なんて手に取るようにわかっていたのかもしれない。
店にあまり通わないことも、何かが起こっていることも。
「潤、私‥‥」
「A？」
なんて言えばいい？
さよならなんて。
なんで言わないといけない？
好きなのに。
こんなに心も身体も許しているのに。
暗がりの中そっと身体を起こしたAにつられるように、潤も上半身を起こした。
お互いにまだ何も身に着けていないまま、向かい合うように座ったベッドの上。
何も言わないままのAを、かがみこんで見上げた潤が優しく問う。
「何かあったんだろ？ 泣きそうな顔して‥‥なぁ、俺には言えない？」
「違うの」
ブンブンと顔を横に振る。
言えないんじゃない。
言いたくない。
(潤、あなたにだけは)
会って、顔を見て、声を聴いて、触れてしまったら、絶対に離れたくなくなるとAは解っていた。
自分の中にある、潤に恋をする女の部分が引き千切られそうに痛む。
あれだけ決めたと思っても、潤に抱きしめられたらここに居たい、ずっとこうしていたいと、それしか思えなくなるから。
Aの頬を撫でる潤の指先。
この優しい手を、ぬくもりを、離さなきゃいけない。
選んだのは、選び取ったのはA自身だ。
「転勤、するの」
「転勤？ ‥どこへ？」
今までのやりとりで、そんなに簡単な話じゃ無いことに気付いている潤の声が硬い。
「‥‥アメリカ、ニューヨークの本社ラボに」
潤が息を呑む。暗がりを切り裂くようなその音にAは視線を落とした。
東京とニューヨークの時差13時間、距離にして10864キロ。
想像もつかない果てしない数字に感じてしまう。
「‥‥いつまで」
やはり潤は敏い。
Aが言いよどむ理由も解っているんだろう。
「短くて三年、長ければ‥‥わからない、ずっとかもしれない」
「ずっとって‥‥帰ってこないつもりなのか？」
声にほんの少しの動揺と、棘が見え隠れする。
だけど潤を責める気持ちなんてAには一つも浮かばない。
責められるのは自分の方だから。
「ずっと夢だったの。この会社に入った時から、ずっと。いつか本社での仕事に携わりたいって、ずっと。やっと巡ってきたチャンスなの。だから、‥‥だからっ」
絞り出すように呟いて、顔を上げる。
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お塩(プロフ) - ゆぃさん» ありがとうございます！って、ゆぃさんまで何を仰る！(笑)私ニューヨーク行ったことないので‥‥(笑)でもタイムズ・スクエア前に立たせるだけで絵になる潤くんですよね、それを見たいです(笑) (2021年9月28日 11時) (
レス) id: c86e5730cc (このIDを非表示/違反報告)
ゆぃ(プロフ) - 完結お疲れ様でした~ NY編…いいです~♪ (2021年9月27日 13時) (レス) id: 7a81be16ec (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - さちこさん» さちこさんコメントありがとうございます！ほんっと格好いいですよね見事に落ちました(笑)全曲は流石に書けませんでした、そこまでネタが思いつかなくて‥。えっ、NY番外編っ！？えっそんなそんな(笑)でも少し妄想しちゃいました、タイムズスクエアの二人ですね成程！ (2021年9月25日 21時) (レス) id: bdf4956e41 (このIDを非表示/違反報告)
さちこ(プロフ) - お塩さん、完結おめでとうございます！こちらのお話も大好きです♪untitled、ほんとカッコいいですよねぇ…全曲のお話書かれるのかと勝手に思ってたので、完結って見て「えぇ( ﾟДﾟ)」ってなっちゃいました(笑) NY番外編、気が向いたらお願いします(笑) (2021年9月25日 8時) (レス) id: 037683b6b9 (このIDを非表示/違反報告)
お塩(プロフ) - ゆぃさん» ゆぃさん返事遅くなってすみません！！ 同僚はものの見事に当てウマですほんとすみませんって気分になりつつ、あれはもう潤くんのイケイケ具合を楽しんで頂ければオッケーです！！ ね、どう思ったんでしょうかね‥(笑) (2021年8月28日 2時) (レス) id: bdf4956e41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お塩
| 作成日時：2021年8月11日 4時
