鈴 ページ3
?「……聞こえなかったか?」
さすがに痺れを切らした彼は、声のトーンを下げて大学生を睨んだ
?「ガキは帰れっつってンだよ」
先ほど遠回しに言った発言が伝わらなかったので、今度は分かりやすく伝えた
?「じゃねェと…このまま折るぞ」
そして彼は大学生の腕を折るような勢いで掴んだ
「痛"っ"てェ!!!」
悲痛を上げた大学生はすぐにAから離れた
「何あんた。見るからに元ヤンじゃん!!」
怯んだ大学生は一目散に逃げていった
『…っ……』
緊迫した状況から解放されたAは少し意識が飛びかけていた
?「おっと。……大丈夫か?」
ふらつくAを彼はすぐさま支えた
『あっ……ごめんなさい…!』
意識が戻ってきたAは彼に謝罪をした
?「別にいいって」
気にしないと言って彼はAに微笑んだ
?「立っとくのが辛かったら…座るか?」
すぐに返事ができなかったAは頷いて答えた
それを察して彼はAをベンチに座らせた
『あのっ……先ほどは助けていただき
本当に、ありがとうございました…』
隣に座る彼に先ほどの礼を告げた
?「まぁ…この辺、ナンパとかよくあるからな」
近辺に住んでいる彼はこの辺りの情報に詳しかった
?「怪我とかもなく…あんたが無事で良かった」
安堵の表情を向けてAに告げた
『はい…。本当にありがとうございます…』
Aは彼と視線を交えて改めて礼を言った
?「………」
彼はAの顔から視線を離せないでいた
『あのっ…どうかされましたか?』
不思議に思ったAは彼に問いかけた
?「いや…なんでもない」
我に返った彼はすぐにAから視線を逸らした
?「あんたすげぇ美人だから…
ナンパされんのも納得した」
今初めてAの顔を確認した彼は、率直な感想を本人に述べた
?「じゃあ…オレはこれで」
彼はAと離れるのが少し名残惜しく感じた
?「気をつけて帰れよ」
風に揺らいだピアスが
もの寂しそうな…
でもどこか、嬉しそうな音を奏でているような気がした
Aは去り際まで、綺麗に鳴る鈴の音に耳を傾けていた
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作者名:おりたん | 作成日時:2022年9月19日 16時