五十三 ページ16
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月が静まり返ったヨコハマの街を照らしていた。未だ賑わっている処もあるだろうが三日月がいる場所には誰もいない。迷いのない足取りで、しっかりと目的地に向かう。其処は公園だった。審神者や他の刀剣男士たちと寄っては雑談に華を咲かせていた場所。
三日月は一人、其処にいた。
「尾行される覚えはないんだがなぁ。理由を聞かせてくれないか?」
凛とした声で辺りに呼び掛ける。すると小さな影が三日月の前に現れた。
「手前、何故判った」
声の主は帽子を目深に被り、三日月を睨む。それで怯むわけがなく、ただ愉快そうに笑い、口元に手を当てた。
「毎日のように戦っていれば少しの殺意で直ぐ判るものよ。然しこんなにも幼いとは思わなかったなあ。齢は? 十六か」
其の瞬間帽子を被った青年の殺意が一気に増えた。辺りを不穏な気配が包む。
三日月は怒りの原因が判らず、首を傾げる。
「……二十二だ。覚えとけ」
「それにしてはちと背が足りんな」
帽子を被った青年もとい中原中也は目の前にいる相手とまともな会話をすることができないと察し、ため息を吐いた。
「話を元に戻そう。何故尾行されているか知りてェだろ」
「……まぁな」
三日月は理由よりも尾行を止めてほしくて態々一対一の話し合いを望んで自ら此処まで来た。理由などに興味はない。
「うちの首領があんたらが怪しいって云ってな。ヨコハマに徘徊している化け物に関係するンじゃないかって……」
「化け物?」
「嗚呼、刀を持った奴らだ」
瞬時に歴史修正主義者だと理解した。“アレ”の仲間扱いか。三日月は内心苦笑する。
「確かに関係はするが俺たちはアレを倒しに来ただけだ。勘違いされては困る。首領……所謂上司か? 其の者にもそう伝えてくれ」
中也はそうか、と一言告げて黙りこんでしまった。
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織川(プロフ) - カティさん» ありがとうございます!こちらでもよろしくお願いします! (2018年3月27日 12時) (レス) id: f371f8209b (このIDを非表示/違反報告)
カティ(プロフ) - 続編おめでとうございます! (2018年3月25日 18時) (レス) id: 0319e8dbc2 (このIDを非表示/違反報告)
織川(プロフ) - ななこさん» ありがとうございます!更新がんばりますね……! (2018年3月22日 20時) (レス) id: f371f8209b (このIDを非表示/違反報告)
ななこ - 続編おめでとうございます!新着確認したら見つけたのですぐに飛んできました!更新頑張ってください! (2018年3月22日 20時) (レス) id: d4cba68423 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:織川 | 作成日時:2018年3月22日 20時