九話 ページ9
少しの沈黙が一生に感じた。衝撃に思わず体が硬直し、俺の右手は幸のふわふわな髪の上に乗せたままで。撫でたせいか髪の匂いがふんわりと香った。そんなことにも気が付かず、どうして？という言葉が頭を占めていた。
驚きでいっぱいの俺と幸。お互い言葉を発さずただただ見つめ合う。ぱっちりと大きい瞳に吸い込まれるような感覚を覚えた。彼の瞳は照明に照らされ綺麗に輝いていて、何故か目が離せない。
｢……どしたん、叶｣
驚きの表情から一転。幸は心地良さそうに目を細めふにゃりと微笑し、そして疑問を口にした。もっと撫でてと言わんばかりに頭を俺の右手に擦り付ける。幸の頭が揺れる度にほんのりと甘い香りが周りに広がっていき、気付けば甘い香りに包まれていた。
スンと鼻をすすり、かぎ慣れていない甘い匂いに頭がクラクラするのを感じながら、右手は頭から話さず口を開いた。
｢幸ってさ｣
なあにぃ、と間抜けに聞き返してくる声に笑い声を漏らせば頭から手を離す。離れていく右手を愛しそうに眺め、物足りそうに唇を尖らせていて。
なんとなく頭へ手が伸びた理由が分かった気がした。指が良く通るサラサラとした髪を見詰め俺はポツリと零した。
｢小動物っぽいよな｣
｢え？｣
キョトンとした顔で小動物は首を傾げる。いまいち理解出来ていないようだ。上手く説明出来ないのだが、触り心地が良く動物で言うと毛並みが良いから。あとは人懐っこいとか。それ以外に理由が見当たらない。
動物を飼ったことがないのでよく分からないが。
考える素振りを見せる彼は、暫くの沈黙から不満気なものへと表情を変える。
｢ここはロマンチックなこと言うところだろ！ てかさ、俺タッパはあるほうだし小動物はないわ！｣
べらべらとマシンガントークをかまされ眩暈がした。あとな、それと、と次々と言葉を紡がれ煩わしさを感じ口を手で塞いでやる。
静かになったのも束の間。今度は俺の手へ注がれる視線が痛い。手へ向けられる視線が苦しくて仕方なく手を離した。
手が離れた瞬間、にんまりと笑顔を見せた幸。何がそんなに楽しいんだか。んふふ、と下品に笑い嬉しそうに｢俺ら付き合ってるみたい｣と呟いていて。
どこが？なんて思ったがそれは言わないでおこう。
｢次、叶の番な！｣
彼の片手のマイクがずいっと此方へ向けられる。頷きつつマイクを受け取り、彼につられるように俺も笑顔を浮かべる。
そして、冗談を一つ。
｢幸へのラブソングでも歌おうかな｣
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青猫(プロフ) - 全然待ちますよ！作者さんのペースで大丈夫です！( ´▽｀) (2021年7月23日 14時) (
レス) id: fe631de70d (このIDを非表示/違反報告)
はたらま(プロフ) - 青猫さん» 更新の度コメント下さり有難う御座います！更新が遅くて本当に申し訳御座いません。今後少しずつ更新頻度を上げていこうと思っておりますので、気長にお待ち頂けると幸いで御座います。 (2021年7月23日 13時) (レス) id: 99dee8af5b (このIDを非表示/違反報告)
青猫(プロフ) - 更新ありがとうございます！ (2021年7月23日 11時) (レス) id: fe631de70d (このIDを非表示/違反報告)
はたらま(プロフ) - 青猫さん» 更新する度に青猫様からコメント頂けて更新の励みになっております。有難う御座います。あまりに遅い更新では御座いますが、今後もご愛読頂けると幸いです。 (2020年11月2日 23時) (レス) id: 99dee8af5b (このIDを非表示/違反報告)
青猫(プロフ) - 通知きたとき叫びました！w忙しい中更新ありがとうございます！(*´∀`) (2020年11月1日 17時) (レス) id: fe631de70d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はたらま | 作成日時：2016年8月12日 11時
