十五話 ページ15
恥ずかしさを誤魔化すように俺は小さく息を漏らす。よくあんな恥ずかしいこと出来るものだ。
｢しょーう！ 日和も一緒に食べたいって！｣
｢まじ？ 雛橋ちゃんおいでー！｣
恐らく雛橋は今朝借りた教科書を返しに来たのだろう。幸は教科書片手にバタバタとこちらへ走ってきた。その後ろを小さな歩幅で着いてくる雛橋。
大喜びの笑を尻目に俺は何故か小さく高鳴る心音に小首を傾げる。原因不明だ。
今まで感じたことのない高鳴り。不思議に思いつつもあまり気にしないことにした。
｢失礼しまーす｣
俺ら四人で囲む机とは別の机に弁当を置き、雛橋はそう言いながら椅子に腰を掛けた。これでは彼女が机に一人になってしまう。気付けば俺はすぐに体と弁当を彼女の机に移動させていて。
彼女と自然と目が合う。雛橋は綺麗な髪を揺らして小さく頭を下げればありがと、と感謝の言葉を述べた。雛橋の礼儀の正しさに感心する。
改めて近くで見てみるとやはり端正な顔立ちをしている。思わず彼女をじっと見つめていると、長い睫毛の真ん丸な瞳に自分が写り込んだ。流石に見つめすぎたか。またも目が合ってしまい、気まずさに視線を外す。
｢見すぎだよ｣とクスクスと笑う雛橋。何だか悔しくて、俺は話題を変えるべく口を開いた。
｢雛橋さんはさ、幸とどんくらいの付き合いなの？｣
｢え？ あー、何年かなぁ……｣
弁当の中身を箸でつつきつつ、そう言葉を投げ掛けた。えっと…と言葉を漏らし指折り数える雛橋。俺が思っているよりも付き合いが長いようだ。かなりの回数指を折った後、自信が無いのか眉を垂らして曖昧にこう言った。
｢多分十年以上、かな……？｣
そうだよね？ と幸に確認を取るように首を傾げてみせる。幸も曖昧に｢うーん、多分｣なんて彼女と顔を見合わせ笑った。
｢結構長いんだな｣
うんうんと頷く二人。父親の転勤が理由で俺には幼馴染がいない。そのせいだろうか。素直に二人の関係に羨ましさを感じた。子供の頃にこんなことがあって、なんて昔話にはむしろ羨ましさしか感じられなくて。
幸はどんな幼少期を過ごしたのだろうか。現在の幸からは彼の幼少期をなかなか想像することができない。わいわい楽しげに会話する幸を思わず見つめた。
幸の面食いが始まったのはいつからだろう。過去に何度好みの顔に恋をして何度結ばれたのだろう。恋の相手はどんな顔をしていたのだろう。俺に似ているのだろうか。
見つめているうちに気付けばそんな疑問達が頭を埋めつくした。
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青猫(プロフ) - 全然待ちますよ！作者さんのペースで大丈夫です！( ´▽｀) (2021年7月23日 14時) (
レス) id: fe631de70d (このIDを非表示/違反報告)
はたらま(プロフ) - 青猫さん» 更新の度コメント下さり有難う御座います！更新が遅くて本当に申し訳御座いません。今後少しずつ更新頻度を上げていこうと思っておりますので、気長にお待ち頂けると幸いで御座います。 (2021年7月23日 13時) (レス) id: 99dee8af5b (このIDを非表示/違反報告)
青猫(プロフ) - 更新ありがとうございます！ (2021年7月23日 11時) (レス) id: fe631de70d (このIDを非表示/違反報告)
はたらま(プロフ) - 青猫さん» 更新する度に青猫様からコメント頂けて更新の励みになっております。有難う御座います。あまりに遅い更新では御座いますが、今後もご愛読頂けると幸いです。 (2020年11月2日 23時) (レス) id: 99dee8af5b (このIDを非表示/違反報告)
青猫(プロフ) - 通知きたとき叫びました！w忙しい中更新ありがとうございます！(*´∀`) (2020年11月1日 17時) (レス) id: fe631de70d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はたらま | 作成日時：2016年8月12日 11時
