十四話 ページ14
いつものように四人で机を囲み昼食中。毎度突然始まるおかずの取り合いで今日もいつも通り騒がしい。
あまりの騒がしさに溜息が零れた時、喧騒の中に澄んだ女子の声が微かに聞こえた。声の方向へ視線を向けると雛橋が立っていた。細く白い喉から発せられる声は、幸、笑、桃の騒々しい声で掻き消されてしまっていて。
目が合うと彼女は困ったように笑った。釣られて俺も苦笑を浮かべれば、恐らく用があるのだろう幸の肩を叩く。
「雛橋さん来てる」
その瞬間、ガタガタと音を立て椅子を引いた。あまりの慌ただしさに笑はケタケタと笑い声をあげていて。日和ー!と大声を上げて幸は彼女のもとへ駆け寄って行った。
雛橋の手を取る幸。勢い良く上下に手を振る姿に思わず苦笑い。しかしこの歳になって男女で手を繋ぐのはなかなか珍しいような。なんというかお似合いな二人に見える。
楽しげに会話を始める二人を何となく見詰めていると、雛橋ちゃんじゃん、と口をもぐもぐと動かす桃の呟きが聞こえた。
「雛橋さんってどんな子?」
疑問がポロリ。特に彼女のことは気にしていなかった筈なのに無意識に言葉が零れていた。
桃と笑に視線を移し首を傾げる。一度疑問を持つと何だか気になって仕方なくなってきた。目を瞬かせつつ桃は喉を上下させる。ゴクリと飲み込めば彼は小さく唸った。
「んー、すっげえ良い子。あと顔が可愛い」
「俺が幸だったら一目惚れだわ」
よく好きにならないよなぁと腕を組み考えるように付け足す笑。
確かに今朝の雛橋の自己紹介は礼儀正しかったし、見た目も小柄で可愛らしい。
幼馴染とは言え幸のぶっ飛んだ性格を受け入れる寛容な心を持ち、短めに切りそろえられた前髪と笑顔がよく似合う可憐な顔立ちの彼女。恐らく二人の言うように彼女は良い子で可愛い子なのだろう。
こんなに素敵な幼馴染がいるのに幸はどうして俺なんかのことが好きなのだろうか。思わずそんな思考になる。
ボーッとお似合いの二人を見詰めていると、幸と目が合った。小さく手を振りながら彼は俺に向けてパクパクと口を動かす。
好き。
彼は声は発さずに確かにそう言った。所謂口パクというものだ。ザワザワと騒がしい教室の中、微かに彼の声が聞こえる。
「伝わった?」
俺は小さく頷く。伝わったことが分かると幸は嬉しそうに頬を染め、続けて「大好き」と口を動かした。声は聞こえないが分かる。
なぜだかとてつもなく恥ずかしい気分になった。
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青猫(プロフ) - 全然待ちますよ!作者さんのペースで大丈夫です!( ´▽`) (2021年7月23日 14時) (レス) id: fe631de70d (このIDを非表示/違反報告)
はたらま(プロフ) - 青猫さん» 更新の度コメント下さり有難う御座います!更新が遅くて本当に申し訳御座いません。今後少しずつ更新頻度を上げていこうと思っておりますので、気長にお待ち頂けると幸いで御座います。 (2021年7月23日 13時) (レス) id: 99dee8af5b (このIDを非表示/違反報告)
青猫(プロフ) - 更新ありがとうございます! (2021年7月23日 11時) (レス) id: fe631de70d (このIDを非表示/違反報告)
はたらま(プロフ) - 青猫さん» 更新する度に青猫様からコメント頂けて更新の励みになっております。有難う御座います。あまりに遅い更新では御座いますが、今後もご愛読頂けると幸いです。 (2020年11月2日 23時) (レス) id: 99dee8af5b (このIDを非表示/違反報告)
青猫(プロフ) - 通知きたとき叫びました!w忙しい中更新ありがとうございます!(*´∀`) (2020年11月1日 17時) (レス) id: fe631de70d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はたらま | 作成日時:2016年8月12日 11時