十一話 ページ11
｢……ん、もうちょいで俺んち｣
会話は盛り上がり、気が付けば家は目の前。
嫌だの寂しいだの騒ぎながら幸は俺の腕に抱き着く。スリスリと肩に頬擦りされると、首筋に彼の金髪があたりくすぐったくて声が漏れる。
日が落ち始め辺りは橙色に染まっている。そんな中、男子高校生二人で何をやってるんだか。そんなことを考え思わず苦笑い。
と、ここで気が付く。左腕にしがみつく幸の歩行速度が途端に遅くなったような。俯き気味な顔を覗き込むと、悲しげに眉を下げ軽く唇を噛んでいて。どした？と首を傾げ問い掛けると、
｢やだ、帰らないで｣
と一言。どうやら少しでも別れを先延ばしたくて速度を落としたようだ。
そう言われてもなぁとポツリ。完全に彼の足が止まる。学校で毎日会えるのに。どうして良いか分からず俺は困り果てて笑うしか出来ない。
｢えーっと、明日また会えるからさ｣
｢んー、そうだけど……｣
不服そうに唇を尖らせた。だって楽しかったんだもんと付け足し、彼はもう少しだけ…と呟く。
しかしここまで来ての停滞は何というかむず痒い。家はもう目の前なのに。
どうすれば幸の機嫌を直し納得させることが出来るか。考えた末俺は彼の頭へ手を伸ばした。
先程と同様のフワフワとした心地良い感触。それは幸も同じなようで。不機嫌そうな表情は崩れ、ふにゃりと目を細めた。
髪が乱れるのも気にせず俺はワシワシと頭を撫でてやる。
｢……これで勘弁してくれ｣
ひとしきり撫でた後、俺は彼の両頬に手を伸ばし両手で包み込む。そして気恥しさを感じ、目を逸らしつつ上記を漏らし手を離した。離れていく手を物惜しげに見ながらほんのりと頬を染めた幸はコクリと頷く。
｢俺、叶のこと、好きすぎる……｣
彼は両頬に手を当て途切れ途切れ呟く。
｢分かったから……帰るよ、じゃあな｣
改めて愛を伝えられると何となく照れ臭く感じて。頬を掻き思わず照れ隠しして見せれば、帰宅することを伝え俺は彼に手を振った。
完全に機嫌が直った様子の彼は｢最後に…｣と独り言を零すと、力強く俺を抱き締める。痛みを感じるくらいに強く抱き締められ軽く呻き声を上げてしまい。
バイバイ！大好き！と大声を上げ俺を解放する。大きく手を振りながら彼は今までの進行方向とは逆を走っていく。
｢あいつ家真逆かよ……｣
驚きつつも小さく手を振り返す。
知らず知らずのうちに俺は家まで送り届けられていたようだ。幸に愛されていることが再確認出来た一日だった。
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青猫(プロフ) - 全然待ちますよ！作者さんのペースで大丈夫です！( ´▽｀) (2021年7月23日 14時) (
レス) id: fe631de70d (このIDを非表示/違反報告)
はたらま(プロフ) - 青猫さん» 更新の度コメント下さり有難う御座います！更新が遅くて本当に申し訳御座いません。今後少しずつ更新頻度を上げていこうと思っておりますので、気長にお待ち頂けると幸いで御座います。 (2021年7月23日 13時) (レス) id: 99dee8af5b (このIDを非表示/違反報告)
青猫(プロフ) - 更新ありがとうございます！ (2021年7月23日 11時) (レス) id: fe631de70d (このIDを非表示/違反報告)
はたらま(プロフ) - 青猫さん» 更新する度に青猫様からコメント頂けて更新の励みになっております。有難う御座います。あまりに遅い更新では御座いますが、今後もご愛読頂けると幸いです。 (2020年11月2日 23時) (レス) id: 99dee8af5b (このIDを非表示/違反報告)
青猫(プロフ) - 通知きたとき叫びました！w忙しい中更新ありがとうございます！(*´∀`) (2020年11月1日 17時) (レス) id: fe631de70d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はたらま | 作成日時：2016年8月12日 11時
