俺の専属マネージャー。２

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「お前が怒ってること全部や。
いきなりキスしようとした事も。
沙百合との記事の事も。
もう過去の事やねん。
これからは二度とあいつとは会えへんから。
許して欲しい」


沙百合さんの事、
あいつ、って言うのが、やだ。


渋谷さんは分かってないんだ。



可愛い黄色のロケバスにたどり着いた。

みんな、宿の方にいるらしくて、
中には誰もいない。


「ちょっとだけええかな。
顔、見て言いたいから」


渋谷さんがロケバスの中に乗り込んで、
背中の私を座席に降ろした。


私だけ座らせて、
自分はその前に立ってる。


見上げた時に、
急に私の目の前に跪いたから、
びっくりした。


何するのかと思ったら、
バスの中の救急箱持ってきて、
手の甲と足首のかすり傷の手当てをしてくれてるの。


指がかすかに触れて、
胸が壊れそう。


渋谷さんにも、心臓の音、
聞こえちゃうかもしれない。


そしたらもう顔なんて見られなくて、
ずっと俯いてた。


「はい、ケガの手当てはこんでええやろ」


大げさな包帯を不格好に巻かれてる。


「ありがとうございます」


思わず顔を上げちゃって、
目が合って、
また胸が苦しくなった。


同じ目線で、
まっすぐに見つめられて息が出来ない。


瞬きも忘れて、身じろぎもしない私に。


「A・・・
俺はお前が好きや。
これだけじゃ、あかんか？」


渋谷さんは、低い掠れた声でそう告げた。


すごく唐突で、
それでいて自然な、
不思議な感じがした。


何も言葉なんか浮かばない。


「今までの行いが悪かったんは認めるし、
お前が俺を信頼出来るようなるまで待つから。
俺はお前と真面目に付き合いたい。
信じてくれへんかな。
俺が真剣やって事」


優しい声でゆっくりと話した後、
渋谷さんが私の手を取ろうとして。


迷って、やめちゃった。


「それより、はよ病院行かなあかんな。
熱あるねんから。
ごめん。
スタッフに知らせてくるわ」


渋谷さん、バスを降りて行っちゃう。


寂しい。


もう少しそばにいて。

ぎゅって抱きしめてくれたら・・・


私、何を考えてるんだろう。


「待って下さい。
渋谷さんは」


引き留めるようなこと、言っちゃった。


私は渋谷さんの特別になれるの？

私に恋してくれる？


そんなこと聞くの、恥ずかしい。

それにまだ信じたわけじゃない。


「ん？なんや？」


「ハイヒール、誰にでもあげるの？」

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