俺と猫の話 (ページ7)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:536 hit

6.共同生活ページ7

　この薄汚い猫を飼うことにした。見れば見るほど普通の生活をしてきたようには思えない。
　
　見た目は20くらいのように見えるのに中身はまるで子どもだ。こっちの言葉は理解できているくせに何が何でも言うことを聞きたくないらしい。

　何度言っても髪を濡らしたまま部屋中歩き回るし、おとなしくしろと言ってもガラスコップを落とす、パソコンに水をかける、挙句の果てに俺の仕事の資料を破きやがった。

　後もう一つ。俺の前でしか飯を食いたくないのか俺の留守中の飯は手を付けない。残業やら接待やらで一日以上家を空けて家に帰ってみたら倒れていた。(お粥食べさせたら無事復活。)
　
　いつの間にか甲斐甲斐しく世話をしているし、その現状がまるで昔からそうだったかのように自然に受け入れてしまったことは気に食わないが、まあいいとしよう。じゃなきゃやってられない。

　あいつの目は相変わらず俺を見透かしている。というより.......

「あ！？動くなって！間違えて切っちゃうだろ！？」

　伸びすぎている上に傷んでいる髪を切ってやるために椅子に座らしていた猫が動いた。こっちに振り返ってあのバカにしたような顔でニヤッと笑う。

　ジョキッ

　俺の手元から響いたその音は部屋中へ広がる。

　俺は背を叩いてくるその腕の力の強さに、少し微笑んだ。