29. 清算できないこと ページ29
「Aさん…無事でよかったわ」
水滴を軽く払い、こちらへ歩いてくるトントン。こちらを見る落ち着いた優しい表情に抑えていたものがまたポロポロと溢れ出してきた。
「あートントンが女の子泣かしたー、いけないんだー」
「やかましいわお前!Aさんどうしたん?俺なんかしてまったん?」
「違うの、安心しただけ…」
トントンはなにかを察したようだったが、何も言わず頭を撫でてくれた。
先程とは口調と雰囲気がガラリと変わったオスマンさん?はトントンと私を感慨深そうに交互に見ていた。
「オスマン、どういう経緯かわからへんけどありがとうな」
「お安いご用や。ところでトントンいつの間に呪い解けたん?」
「? まだ解けてへんよ?」
「呪い解けてへんのに付き合っとるん?自分の事許さんと付き合えへんと思っとったわ。」
「え?」
呪い、という単語に嫌でも反応してしまう。
オスマンさんもグルッペンが言っていた小隊の人なんだろうか。
「ちゃうでオスマン。Aさんは俺の飼い主や。…無職なのに付き合う訳にもいかへんし。」
さらりと否定し、ボソッと最後に付け足すように言うトントン。本当に気にしてるんだな…。
と、そこで嬉しそうにオスマンさんがトントンの手を取る。
「トントン無職なん!?じゃあウチで働かへん?」
「えっ、俺紅茶の事全然知らへんで。」
「大丈夫!店のwebサイト作りたくて、そのプログラムをやって欲しいんやけどな」
巧みな弁舌でトントンを説得していくオスマンさんを横目にぼんやりと考える。
…グルッペンは今、どうしているんだろう。
酷い事を言ってしまったことへの罪悪感と、計算ずくで騙されていたという疑いがぐちゃぐちゃと混ざり合う。
でも、私を騙すメリットはどこにあるんだろう。何か理由がなければおかしい。それなら…
「…呪い?」
「Aさん?」
「ねえトントン、犬の呪いってどうやったら解けるの?」
「それは、」
「え、トントン、呪いの事話してなかったん?」
苦虫を噛み潰したような表情をするトントンを一瞥すると上品とは言えない微笑みでオスマンさんは告げた。
「コイツがかけられたのは犬になる呪いなんかじゃないで。」
「オスマン、それ以上は」
「自分を許さへんと死ねへん呪いや。」
「……」
「文字通り解く条件は自分を許す事や。後はお家でトントンに説明してもらい。」
ひらひらと手を振って店の奥に歩いていくオスマンさんの後ろ姿を、隣の紅い目はきつく睨みつけていた。
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身長100m - いや。普通に大好きです。結婚しましょう (2021年1月3日 14時) (レス) id: baba500277 (このIDを非表示/違反報告)
ふぁこ(プロフ) - 頑張ってください…いつまででも待ってます (2020年3月6日 19時) (レス) id: f472df8b77 (このIDを非表示/違反報告)
兎危@ゆっ家族 - もう、うるっときちゃったじゃないですか。何ですかこの作品。最高すぎます。こんなの、評価満点以外選べないですよ。設定も、物語の進み方も、全部好きです。呪いのことやメンバーとの関係、過去についても惹かれるものばかりです。これからも応援しています (2018年5月12日 11時) (レス) id: 556657c7c7 (このIDを非表示/違反報告)
ふぃよーるど(プロフ) - ミーさん» 再びコメントありがとうございます〜! 完全に趣味で月光を選んだのでイメージが伝わって何よりです笑 やっと仲直りです、が、だいぶ展開が遅いと思いますので期待せずお待ちください、、 (2018年4月14日 22時) (レス) id: 50cd7cd971 (このIDを非表示/違反報告)
ミー(プロフ) - 更新ありがとうございます。月光を弾くグルさん…!想像しなくても優美な感じがしますね(笑)仲直りをした主とグルさんがこれからどうなってくのか楽しみです(^-^) (2018年4月8日 17時) (携帯から) (レス) id: 750b1e0df3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふぃよーるど | 作成日時:2018年3月10日 19時