13. 零れる ページ13
聞きたいことはいっぱいあった、けど
「なにか飲みたいものはあるか」
「うーん、あんまりわからないから、グルッペンのオススメでいいよ。」
「わかった。では…」
グルッペンは注文を終えると、自然と距離を詰めて隣に座ってきた。
「……」
「……」
「ねえ、」「なあ、」
「「……」」
「えっと、グルッペン先どうぞ」
「あ、ああ…Aはどうしてここに来たんだ?お前にそういう趣味があるとは思えないんだが」
「同僚に勧められたんだ、最近知り合いがホストクラブ開いたから行ってやってって。」
「……ふむ。」
私の言葉にグルッペンが考えるそぶりを見せる。
今はやめとこうなんて言い訳して、グルッペンこそなんでこんなところにいるの、という肝心な問いを聞けないでいる。
気まずい沈黙の後、スーツの人が気の抜けた笑みを浮かべながらカクテルを運んできた。
「お待たせしました〜、こちらアプリコットフィズ2つです〜」
「ありがとうございます。ねえグルッペン、これどんなカクテルなの?」
「これは甘くてアルコールも弱めで飲みやすいカクテルだゾ、帰りもあるだろうしこれにしたゾ」
「そうなんだ、気を使わせてごめんね。」
「気にするな、無料ならもっと高めのものを頼んでも良かったかもしれんな。」
「それは勘弁してやー」
スーツの人がお手上げ、というジェスチャーをするのを見てくすっと笑ってしまう。横を見るとグルッペンと目が合って、また少し笑った。
「では、乾杯。」
「乾杯。」
私は甘酸っぱいカクテルに口をつけた。
*****
「ところで、Aは酒はどのくら…大丈夫か?」
「だいじょうぶだよぉ〜」
「完全に酔いが回ってるな」
「ねえぐるっぺん〜」
「なんだ?」
「手貸して〜」
怪訝そうな顔をしながらもグルッペンが手を差し出す。
ああ、やっぱり人間の、男の人の手だ。
そう思うとなんだが嬉しくなって、
「なぜ握るんだ?」
「えへへ、ぐるっぺんが人間だ〜って。」
「……そうか。」
「ねえぐるっぺん〜」
「なんだ?」
「どうしてここで働いてるの?」
ぽろり、と先ほどまで渋っていた言葉が零れた。
「金が、欲しかった」
「え」
予想外の答えに思わず目を見開いた。
酔いが冷めていく。
グルッペンも言うつもりがなかったのか自身から零れた言葉に驚いていた。
14. 掴んで、その先→←12. 掴めていない距離感 (Side gr)
519人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
身長100m - いや。普通に大好きです。結婚しましょう (2021年1月3日 14時) (レス) id: baba500277 (このIDを非表示/違反報告)
ふぁこ(プロフ) - 頑張ってください…いつまででも待ってます (2020年3月6日 19時) (レス) id: f472df8b77 (このIDを非表示/違反報告)
兎危@ゆっ家族 - もう、うるっときちゃったじゃないですか。何ですかこの作品。最高すぎます。こんなの、評価満点以外選べないですよ。設定も、物語の進み方も、全部好きです。呪いのことやメンバーとの関係、過去についても惹かれるものばかりです。これからも応援しています (2018年5月12日 11時) (レス) id: 556657c7c7 (このIDを非表示/違反報告)
ふぃよーるど(プロフ) - ミーさん» 再びコメントありがとうございます〜! 完全に趣味で月光を選んだのでイメージが伝わって何よりです笑 やっと仲直りです、が、だいぶ展開が遅いと思いますので期待せずお待ちください、、 (2018年4月14日 22時) (レス) id: 50cd7cd971 (このIDを非表示/違反報告)
ミー(プロフ) - 更新ありがとうございます。月光を弾くグルさん…!想像しなくても優美な感じがしますね(笑)仲直りをした主とグルさんがこれからどうなってくのか楽しみです(^-^) (2018年4月8日 17時) (携帯から) (レス) id: 750b1e0df3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ふぃよーるど | 作成日時:2018年3月10日 19時