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智の出身大学を出たあと、いくつか大学を回って大阪まで帰ってくると20時近かった。
たぶん櫻井さんと二宮くんはまだ丸山さん達と飲んでいるんだろうけど、2人に顔を合わせづらくて私はホテルに戻ってきた。
「遅くなってしまったので今日は先にホテルに戻らせていただきます。
申し訳ありませんと丸山さんにお伝えください」
同じ文面を櫻井さんと二宮くんに送る。
二宮くんからは、りょーかい、とすぐに返信がきた。
櫻井さんは既読にならないけど二宮くんが見てるし大丈夫だろう。
そのまま私はうとうと眠ってしまっていて、真夜中に目が覚めた。
ふとスマホを見ると、22時ごろ着信があったことに気づく。
櫻井さんからだった。
さすがにこの時間にはかけ直せない。
明日朝一番に謝ろう。
そう思って翌日、朝食の席で櫻井さんの姿を探したけれど、見つからなかった。
「櫻井さんなら帰ったよ」
眠そうに目をこすりながら、二宮くんが言う。
「え？もう？だって新幹線の時間……」
「いーんじゃない、別に。指定だけ変えたんでしょ」
「それに昨日22時くらいに櫻井さんから着信があったんだけど」
「……先帰るって言おうとしたんじゃない」
そんなことわざわざ電話で言うかな？
朝食を食べたあと櫻井さんに電話をかけたけど出なかった。
気にはなったけれど、緊急の用事なら二宮くんに伝言を頼むとかいくらでも方法はあるし、着信も残っているはずだ。
・
「二宮さん、Aさん、また大阪来た時はぜひ飲みましょうね！」
わざわざ新大阪まで見送りに来てくれた丸山さんにお礼を言って、私と二宮くんは東京行きの新幹線に乗った。
「昨日の飲み会楽しかった？」
私が聞くと隣に座っている二宮くんがちらりとこっちを見た。
「んー、まあそこそこ」
「私もお好み焼き食べたかった」
そこで会話が途切れて。
なんとなく沈黙が続いた。
「……この間のこと、なんだけど」
「ん」
二宮くんには、ごまかしたり隠したりしたくなくて。
櫻井さんと父の話をした。
櫻井さんのお母さんの話は私から言うべきことではないから単に父に憧れていた、と言ったけどそれ以外は全部話した。
黙って聞いていた二宮くんは、前を見たまま小さく息をついた。
「よくわかった」
「……うん」
「なんでAが櫻井さんにあんなに最初からひかれてたのか、ナットクした。けど」
「けど？」
「それって恋じゃないじゃん」
薄茶色の瞳が。
まっすぐこっちを見た。
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作者名：つむ
| 作者ホームページ：
作成日時：2018年1月22日 18時
