Orange halation 2 【S.S/K.N】〈完結〉 (ページ19)

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53. -side.N- ページ19

「それってどう聞いてもナイスアシストじゃない？」

昨日の話の顛末を聞いた相葉さんの感想。

今日の昼は社食じゃなくて屋上でパン。

失恋したばっかりなんですよ、いつもみたいに社食には行けないでしょ。

相葉さんは別に誘ってないけど空気を読んでついてきた。

「そんなことねーわ。
俺も言いたいこと言ったし」

「でも結局櫻井さんの本音引き出して、Aちゃんに聞かせてあげてるじゃん」
「まあ、結果的にはそうなったけど」
「ニノは優しいね」
「だからそんなんじゃねーって。ただ」
「ただ？」
「ずっと同じとこでぐだぐだやってんのが我慢できなくなったから決着つけたかったの」
「ふーん。ま、ニノがいいならいいんだけどね」

そう言いながらもちょっと不満そうな相葉さん。

「俺はニノ推しだったんだけどなー」
「相葉さんに推されても嬉しくないわ」

屋上は風が強い。

パンが入っていた袋が飛びそうになったから片足で抑えた。

「だけど思ってたより元気そうでよかった」
「そ？」
「だってニノめちゃくちゃ好きだったじゃん？
Aちゃんのことめちゃくちゃ好きだったじゃん？」

うるさい。
当たってるけど。

「やめろや。落ちこませたいわけ？」
「違うけど。その割になんかスッキリしてるというか」
「まーね。ちょっとあいつにはすごいものもらっちゃったから」
「え？！何？何？」
「俺の一生をかけてやるくらいの気合い入れなきゃできないもの」
「全然わかんない」

不満そうな相葉さん。

「たぶん俺、二、三年したらこの会社辞めるわ」

「ええええ？！」

大野さんから連絡が来た。

Aのお父さんの遺作のことを、Aから聞いたらしい。

「ニノがその気なら、俺が何年かあと映画作る話もらえたらうちの会社においでよ。
ADとかかもしんないけど、いずれ自分が撮るなら少しでも現場を知ってる方がいいでしょ」

「俺のことなんて眼中にないと思ってた」

「もったいない、って言ったじゃん。
ま、本音を言うと。
俺が撮りたかったんだけどね、遺作」
「そーなの？じゃあなんで」
「Aが俺じゃなくてニノを選んだだけの話でしょ」

何かを選ぶってことは何かを失うってこと。

俺はAにフラれたけど、もしかしたらもっと大事なものをもらったのかもしれない、とその時思った。

「何一人で笑ってんの？
全然話が見えない」

「まだ内緒。いつか教えてやるよ」

いつか必ず。

Aに俺を選んでくれたことを後悔させないような作品を撮る。