【刀剣乱舞】呑気に気ままに【審神者】 (ページ5)

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「さながら低迷＊鶯丸」ページ5

審神者部屋は本丸の一番奥にある。

顔を覗かせればいつも主が笑顔で出迎えてくれるため、刀剣達の溜まり場となっていた。

「主、茶でもどうだ」

既に茶葉の入った急須に鶯丸専用のお湯ポットと二人分の湯呑み。

それから、今日の景趣は春だと予め聞いていた為さくらの花弁をイメージして作ったお茶請けの和菓子をお盆にのせ、審神者部屋へとやって来た。

主は慣れた手つきで縁側に座布団を二枚置き、そのうちの一つに腰を下ろす。

鶯丸もそれに続いてゆっくりとしゃがみ、湯冷ましをしてから急須にお湯を注いだ。

「贅沢だなあ」

主の視線を感じ反射的に顔を上げる。
誘われるような笑顔。彼の柔らかい雰囲気に平和ぼけでもしてしまいそうだ。

「贅沢？」

「そうだよ。こうして鶯丸に何から何までしてもらうことが僕の何よりの贅沢なんだ」

そうか、と鶯丸はあえて素っ気なく呟く。同時にこんなものが贅沢なのかと苦笑した。

これくらいの事なら誰にだって出来る。
それに、俺よりも燭台切の方がこの和菓子ももっと上手く作れるだろう。

なんだか煮え切らない思いのまま茶を入れた湯呑みを主に渡し、自分も座布団にゆっくりと坐する。

「疑似の太陽だけど良い日差しだね」

一口飲んでから主はそう言った。
それから少しの間を置いて「いや違うな」と独り言のように呟く。

「疑似の太陽だから良いのか」

「…？主は太陽が嫌いなのか？」

疑問を素直に投げ掛けると、主は庭にできた大きな池を見詰めたまま「どうだろうなあ」と騙くらかす。

つくづく君らしい答え方だと思った。

そもそも受け答えに正解不正解という概念はないが、これがこの主の正しい返答だとどこかで勝手に納得していた。

それが嬉しくて自然と口元が緩んでいく。

「池が綺麗だな。太陽に照らされてまるで大包平のように輝いている」

「あ、ほんとうだね。先程から池に落ちて一向に上がって来ないのが嘘みたいに綺麗だ」

主の言葉に不意をつかれて咳き込む。
心配そうな顔で背中をさする主に構わず、鶯丸は池を指をさして言った。

「え……、誰か落ちたというのか？」

「落ちたんだろうね」

水に落ちたような音がしたし、とも付け足す。

鶯丸が目をぱちくりさせていると、主は空を見上げ、ぽつりぽつりと昔を思い出すかのように目を細めて語りだした。