続*髭切 ページ11
「珍しい事もあるものだ」
そう言って悠長に茶を啜る三日月に対し、髭切は首を捻らせる。
何かあるのかと彼の目線の先を辿れば、廊下で弟が両手に何かを持って突っ立っている所だった。
「はっはっは、お前の弟、どうやら勘違いをしているようだぞ」
「ありゃ、本当だ」
でもあれは何かな。
よく目を凝らせばうっすらと浮かび上がるもの。
膝丸の両手にうねりながら巻き付くあの黒い髪の毛の束。
弟は真剣な表情でそれを見つめては口をぱくぱくさせている。「あるじ」という声は聞こえてきたのだが、それ以外は何を話しているのか聞き取ることが出来なかった。
うーむ、と黙り込む髭切をよそに、三日月が淡々とした口調で話し出した。
「以前、山姥切の奴もあやつと同じような行動を取っていたな」
ああそういえば、と彼の言葉でふと思い出す。
「粟田口の…ええっと、脇差の…………んー、まあ、脇差の子や短刀の子が弟と同じことをしていたのを見たことがあるような気がするよ」
「このところ夜戦続きで短刀やら脇差が中心となって出陣していたからな。報告や相談事もそやつらがするだろう」
「それに俺も間違えたことがあるぞ」と三日月が笑う。
苦笑にも近かったが、別段それを重く気に止めている様子は感じられなかった。
まあ仕方が無いよね。
髭切は項垂れながら自室へと帰っていく弟を見た。
もうその手に何も持ってなどいない。
持ち主に返されたのだろう。
先程の膝丸は、まるで献上するような姿勢で膝をつき、髪が巻き付く両手を顔の上へあげていた。
「さて、そろそろ主が帰ってくる頃合いだな」
三日月がよいしょ、と立ち上がる。
髭切も茶を飲み干してゆっくりと腰を上げた。
今日、
主は政府の施設へ行っていたんだけど、近侍の弟は何を主だと思っていたのかな。
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作者名:ナナリナ | 作成日時:2019年5月10日 18時