検索窓
今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:11,869 hit

「一難去ったが*一期」 ページ1

地を這うような
鈍く鋭い音がした。


「あるじさまぁ……」
五虎退が一匹の虎を抱え、部屋の戸を恐る恐る開けてきた。
その足元には少し震えながらもちょこんと大人しく座る四匹の白虎。


「おや五虎退。どうかしたのかい」


「どれ、茶でも飲むか?」


いち早く彼に気づいたのは近侍の蜂須賀と執務室へまったりしに来たという傍迷惑な鶯丸だった。


「そっ、そのぉ……お外で大きな音が」と言う彼の言葉を覆い隠すように、また部屋の外から耳を揺らすような低い音がした。


「随分主張の激しい雷だね」と呑気に審神者は笑う。そんな主の雰囲気にのまれた二振りが茶を啜り一息置いて話し出す。


「大包平のような喧しさだな」


「大包平云々はさて置き、もうすぐ雨が降る知らせが届いたね主」


「そうだなあ。現世もちょうど梅雨らしいから景趣を変えて正解だった」


「ああ、そういえばおおかね」と語り出そうとした鶯丸の言葉は五虎退の「ふええぇぇえ……っ!」という泣き声により区切りの悪いところで遮られ消滅した。


しかし、本当に呑気で自由な審神者は「大金笛とはまた御利益のありそうな名前だね、どんな笛なのか教えてくれるかな」と穏やかな口調で五虎退の元へ歩き出す。
「吹けば金が落ちてくる、なんて逸話でもあれば僕達は大金持ちになれるね」等と言い乍五虎退の頭を撫で回した。


そこへ痺れを切らした一期一振が障子を蹴破って部屋に入って来た。大きな音を立てて外れた障子は無残な姿へと変貌を遂げることとなった。


「主殿!」鬼の喧騒だ。


そんな彼を見て、壊滅的なまでも呑気な審神者はふふっと柔らかい笑みを零し、「雷が怖いからって障子を壊しちゃいけないよ」と一期が雷が怖くて審神者の元へ来たと勘違いしていた。これには鶯丸も「あれは控えめにいって髭切や三日月よりも酷い」と我らが主をじっとりと見つめた。


そんな交わらない会話を四,五回繰り返してとうとう一期の怒りが限界まで達してしまった。よく耐えたよ、と蜂須賀は遠い目をしていた。


「違います!!私が怖いのではありません!五虎退が雷に怖がっているのです!ほら見てご覧なさい!雷が鳴る毎に小さな身体が跳ね、涙がぽろぽろと零れているではないか!主殿の目は節穴かッッ!!!!」

続→



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (18 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
15人がお気に入り
設定タグ:刀剣乱舞 , 短編集 , ホラー   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ナナリナ | 作成日時:2019年5月10日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。