群青の星 (ページ5)

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陶芸展当日。出かける準備をしていると、村上さんから連絡が入った。

「すまんなぁ。」

「いえ、急用なら仕方がないです。じゃあ僕もやめて…」

「お前は行け。」

「え？」

「お前は家におってもろくな事にならへん。外の空気を吸いに行け。」

「…」

「ほら！出かけろ！！」

「え〜…はい。」

「あとから聞くからな！うちのもんが来ましたかって！」

「はいはい、わかりました。」

うちのもんて。どこぞの組織やないんやから…

閑静な住宅街。しばらく歩くと図書館や公園が見えてくる。その一角に陶芸展の会場があった。

「ごゆっくりどうぞ。」

そんなに混んでいるわけでもないけど、空いているという感じでもない。陶芸を趣味で始める人も多いし、人気ではあるんだろう。

周りの人がどんな観点で作品を観ているのかはさっぱりわからない。でも自然と惹き込まれながら歩みを進めていた。

様々な食器たち。かなり個性的なものもあれば、機能性重視のスタイリッシュなものもある。

「あ。」

会場の中程を過ぎた頃、思わず声を出してしまう。目の前の一輪挿し。深い青にキラリと光る星のような模様。フォルムもデザインも魅力的で吸い込まれそうになる。しばらく目が離せず、そのままじっとその作品を眺めていた。

「気に入られましたか？」

急に声をかけられて驚く。振り向くとそこには自分よりも少し背の高い、随分整った顔立ちの人が立っていた。

「あ…その、何と言うか、とてもきれいで…夜空に吸い込まれそうな気持ちになるというか…」

「…」

「あの！あの、でも僕は全く陶芸は初めてで、その、適当なこと言ってますよね…」

僕の感想に考え込むような仕草を作られて焦ってしまう。でも次の瞬間、その人はとても美しく微笑んだ。

「適当じゃないですよ。そういう風に思ってくれるかなって思って作りましたから。」

「…え、作った？」

「はい。この作品、私が作りました。」

「わ…す、すみません！」

「なんで謝るんですか！」

顔をくしゃっとさせて笑うと、優しい瞳が僕を見つめる。

「うれしいです。そんな風に言っていただけて。これからの励みにします。ゆっくりしていってください。」

そう言ってその場から離れていった。びっくりした。まさか作った人がいるなんて。

「大倉忠義…さん。」

作品の隣にある名前はさっきの彼のものだろう。…武士みたいな名前やな。