群青の星 (ページ39)

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「丸山さん。こうしてると俺はすごく幸せや。丸山さんは？」

「…」

突然のことに混乱して答えられない。これは…どういうこと？

「ふふ。幸せやなぁ。」

「あの…」

「丸山さん。ゆっくりでいいねん。自分の気持ち、蓋をせんと開放してあげ？」

腕の力が緩む。上からの視線に顔をあげるとさっきと同じ先生の瞳がある。

「先生…」

「きれいな瞳や。澄んでいて、深くて、誰かに甘えたいのに、それが出来ない。」

前にしてくれたようにゆっくりと頬を撫でてくれる。目が離せないでいると、ふっと微笑んでもう一度ぎゅっと抱きしめられた。

「あー！！悔しいなぁ！」

「え？」

今度はバッと体が離れる。

「悔しい！」

「な、何がですか？」

「内緒ー！」

そのまま先生は無邪気な子どもみたいに川の水をバシャバシャと弾いた。

「丸山さん。俺、あなたの支えになるから。何があっても味方。だから、怖がらずに頑張りなさい。先生からの命令！」

ビシッと指をさされて、思わず姿勢を正す。そんな僕の姿に、先生は満足そうに微笑んだ。

「よし。帰ろ。おいで、丸山さん。」

帰りの車、先生のことを考えてぼーっとしてしまう。先生は、僕のことをほんまに考えてくれてる。僕のための言葉。じわじわと心に沁みてくる。

「丸山さんは…ヤスといると本当に穏やかな表情になりますね。」

「そうですか？」

「はい。穏やかで本当に落ち着いた顔をしています。」

「…先生は不思議な人です。僕のことは知らないはずなのに、まるで知っているみたい。」

「ヤスは確かにそういう所があります。」

「先生といると、心があたたかくなって、全部を包まれているような…ゆりかごで休んでいるみたいな気持ちになります。」

「そうですか…」

車内の沈黙。僕はやっぱり今日の先生のことを考え出す。大倉さんは何を考えていたんだろう…

◇

「マル。」

「ん？」

「ケンカした。」

「え、横山さんと？」

「もう終わりや。俺の人生は終わった。ｳｳｯ…」

「ちょ、ちょっと！ちゃんと話をしたん？」

「してない。怖い。」

「何があったんですか？」

「手を繋いでた。女と。」

「え！？」

「やっぱり女がええんや。」

「喧嘩したってことは言い合いになったってことちゃうの？」

「逃げた。」

「は？」

「その場から逃げた。話なんか出来ひん。」

乙女！！こんな可愛い人やったとは。いや、純粋な人やとは思ってたけど。