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何となくテンションが下がったような雰囲気になって焦る。親友やけど、ライバル心みたいなのもあるんかな。
「あの、大倉さんのことももちろん憧れてますよ。うわぁ！！」
車がさっきよりもグラつく。
「あ、あの…」
「ほんまに？」
「そりゃあ、はい。」
「ん。とりあえずじゃあいいか。すみません、運転荒くて。」
謝りながら、笑顔の戻った大倉さん。なんか二人の関係っていいな。分野は違うけど二人とも一流。切磋琢磨してる感じが素敵。でもちょっと気をつけて話さないと。プライドってあるもんな。
山道に入ってしばらく。住宅街の奥に少し開けた土地。そこに先生の工房があった。
「素敵な所ですね。」
「はい。俺、ここで作らせてもらってるんです。」
慣れたように鍵を開けて入っていく大倉さん。広くもなく狭くもない。でも開放感があるのは、部屋から外の景色が一望できるから。
「すごい…」
「あいつ、ほんまに凄いんですよね。こんなん、俺には考えられへん。」
「そう言いながら、材料や道具を確認していく。」
「丸山さんも作るでしょ？」
「いいんですか？」
「もちろん。そのために呼んだんですから。今日は芸術家同士、お互いじっくり作りましょう。」
作業台は２つ。お弟子さんが来ることが増えて、増やしたらしい。
大倉さんは隣で黙々と土を捏ねだした。僕は何を作ろう。
目の前には自然の緑。少し上を見ると真っ青な空。ふと浮かんだのはお皿。中皿程度の大きさで緑に囲まれた場所で見上げた空の青さ。形は薄く、きれいな丸が作りたい。
「あ〜…崩れた。」
何度もやり直してようやく思っていたものに近づいてきた。何枚か作り終えて一息つく。
そっと隣を見ると真剣に土と向き合う大倉さんの姿。柔らかな手に包まれて、土が面白いくらいきれいに形を変えていく。
あの手に触れられたら、優しくなぞられたら、どんな心地がするだろう。あんな風に形を変えて…
「ﾊｯ…」
何を僕は…。でも大倉さんの手の動きから目が離せない。その動きがあまりにきれいだから。
昼に訪れたのは車を少し走らせた先にあったカフェ。景色が良くて、メニューも充実しているから、少し足を伸ばして来るだけの価値はある。店内は思っていた以上に人が多い。
「お兄さん、注文いいですか？」
「はい！どうぞ！」
ハキハキとした受け答え。気持ちがいい。
「丸山さん、これうまいよ。食べてみる？」
「ん、いいんですか？じゃあ、これどうぞ。」
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作者名：orange | 作成日時：2022年12月27日 14時
