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「あれ、横山さんは?」

「もう帰りましたよ。さ、ほら、タクシーに乗って。」

心地よい車の振動。誰かの肩に頭をおいて、そのまま眠ってしまう。

「丸山さん、起きて。降りますよ。鍵は?」

見慣れたドア。いつものように鍵を開けて、ベッドまで直行やぁ!

「危ない!」

「わ、目がまわるでぇ…」

目を開けると玄関の天井。こけてもーた。

「丸山さん、ちょっと起きて。ほら。」

あれ…天井だけの世界に大倉さんが現れた。

「夢かな…」

「え?」

「大倉さんがいてる。」

手を伸ばして頬にふれる。

「なんかほんまにいてるみたいや。」

優しい瞳が僕を見つめる。次第に近づいて、唇に優しい感触。あれ、僕…

「したかったんでしょ?」

大倉さんの低い声が近くで囁く。夢…?酔っ払って…僕…でも…

「もっと…」

驚いて、でも仕方ないなって顔をして、そして…

「ン…」

触れるだけのキスが深くなって、気持ちよくて、そのまま意識がなくなっていた。



「大倉さん!すみませんでした!!」

朝一番、村上さんから昨日のことで電話をもらい、大慌てで大倉さんに電話をした。

「いいえ。二日酔いとか大丈夫なんですか?」

「それはもう、村上さんから連絡をもらって吹っ飛びました。」

「はは!あんなになるまで飲むなんて、よっぽど楽しかったんですね。」

「まぁ…はい。あの、僕、なにか失礼なことしてません?こんな、飲み過ぎで記憶がないとか、たぶん初めてで…」

「へー!覚えてないんですかぁ?」

「ひぇ!や、やっぱり何かしでかしてますか?そ、その、一体どんな失礼なことを…」

「はははっ!大丈夫ですよ。送っていったらそのまま眠ってしまいました。」

「…それはそれでほんまに失礼しました。ほんと、すみません。」

「いいえ。またゆっくり飲みに行きましょう。今度は記憶をなくなさい程度に。」

「はい。よろしくお願いします。」

はぁ。自己嫌悪。飲み過ぎて記憶ないとか恐ろしすぎる。疲れてたんかな…。ほんまに気をつけよう。

「あ。じゃあ、来週どこかで晩飯。」

「え?」

「晩飯付き合ってください。」

「それは全然…」

「あ!金曜がいいです!」

「えと、はい。大丈夫です。」

「店は任せてください!じゃあ!」

「あ、切れた…。」

あれ。僕がお詫びをしないといけないのに、何か違うことない?…ま、ええか。でも…飲みに行って失敗したのに、また飲みに行くの?ん〜…。ま、ええか。

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作者名:orange | 作成日時:2022年12月27日 14時

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