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「あ!うわっ!すみません!先生、ごめんなさい!!え、大倉さん!?」
「おはよ。」
「お、おはよって、今何時!?ほんまにすみません、先生…」
「そんなん、全然ええよ。」
「だって、食べたし、その、泣いたし、慰めてもらったし、寝たし、わぁ…やってもーた。」
「いいって。かわいい丸山さんが見れたし。」
「か、可愛くない。おっさんです。先生は、男にも平気でそんなん言うの、ほんま…」
「俺も言いますけど。」
「確かに、二人はそういうことよく言いますけど、まぁ、悪い言葉ではないからいいのか…」
「(笑)!何言うてんの!」
二人でケラケラと笑い出す。性格は違うのに、ほんまによく似てる。その二人を見てとても安心する自分がいた。
「ほんなら俺が送っていくわ。ええやろ、ヤス。」
「まあ、しゃあないな。でも丸山さんが俺がいいって言うかも。」
「え?」
「はあ!?」
「ふふ。ほんなら頼むわ。二人とも気をつけて帰るんやで。」
「はい!先生、また来週お願いします。」
「はいはーい。」
教室を出ると夜空に輝く星。田舎みたいにたくさんは見えないけど、それでも一つ一つが光り輝いている。
「大倉さんの一輪挿し。」
「え?」
「あの一輪挿しみたい。僕、まだあの一輪挿しにあいさつしてるんです。」
「…」
「大倉さん?」
「…もぉ。丸山さんはほんまに…」
「なに?」
そっと手が伸びる。頬にふれたと思ったらすぐに離れていった。安田先生とは違う柔らかい手。ふと追いかけたくなる衝動にかられて我に返る。
「丸山さんはほんとにモテますよね。」
「え?全然ですよ。」
「嘘。」
「いや、嘘なんか…。それやったら大倉さんなんてめちゃくちゃでしょ?」
「めちゃくちゃでしょって、日本語おかしくないですか?」
「はは。すみません。でもそうでしょう?」
「まあ、よく告白される機会はありますね。」
「わ、モテる人は言うことが違う。」
「でも、本命に振り向いてもらうには、なかなか苦労します。」
「大倉さんでも?理想が高すぎるのかな。」
「まぁ、そうなのかもしれません。あの…」
何故か少し改まる大倉さん。
「丸山さんはパートナーとかいらっしゃるんですか?」
パートナーという言葉。たいてい、彼女は?と聞かれることが多いので、この言葉は新鮮。留学してたら、こういう感覚になるのかな。
「いえ、いません。」
「本当に?」
「はい。…僕は恋愛とか、そういうのはいいので。」
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作者名:orange | 作成日時:2022年12月27日 14時