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「ありがと。俺が呼んでん。」

オフィスから少し出て、大倉さんはじっと様子をうかがうように僕を見る。

「大丈夫?」

「はい、ありがとうございました。復活です。」

「無理したらあかん。」

肩にそっと置かれる手。田西課長とは違う。優しい手のぬくもり。

「大丈夫です。ほんとに。」

「…わかりました。」

「スマートな対応、流石ですね。」

「え?」

「すごく助かったし、落ち着けました。」

「そう?」

「はい。」

「丸山さんには、ほんまに世話になったから。」

「そんなん…、僕で良ければいつでも聞きますよ。」

「ほんまに?俺も丸山さんの話、いつでも聞きますからね。」

やっぱり優しい。話し方も声も優しくて、胸が熱くなる。

「ありがとう。また、陶芸教室で。」

「そうですね。また連絡します。」

仕事に戻る。ちょっとした約束が胸に明かりを灯す。

「よし。」

切り替えが大事。村上さんから教わったこと。いつも通りに明るく元気にいけばいい。



「せんせー!!」

「あ、丸山さん!」

「やっと来れましたー!」

「やっと会えたわ。随分忙しかったんやなぁ。」

「そうですね…。早く土にさわりたい。」

「ふふ。おいで、いい土があるから。」

安田先生の穏やかな雰囲気に甘えて、だらだらとついていく。

「なんかやつれたんちゃうか?」

そっと頬にふれる先生の手。やっぱり華奢なイメージと違ってがっしりしてる。

「そうかな。特に変わってないような気がしますけど。」

「ちゃんと食べてんの?」

「それは、はい。ヤケ食いです。」

「ははっ!今日は昼も夕飯も俺が作るわ。」

「え!いやいや、先生、そんなんいいですよ。」

「俺、結構料理すんねん。うちの子たちにも作るし、丸山さんもどうぞ。」

「じゃあ、お邪魔します。」

「ふふ。邪魔ちゃうし。」

久しぶりのリラックスした雰囲気。土にさわると気持ちがスッと持っていかれる。

「丸山さん。丸山さん!」

「ん、あ、はい!」

「よく捏ねられてるよ。めっちゃ集中してたね。」

「はは…無でした…」

「もうちょい放っておけばよかった?」

「いえいえ。形もイメージ出来たし、作ってみます。」

「ん。頑張って。」

今日はろくろを使ってチャレンジ。湯呑みがいいなぁ。

土にふれる指。そっと触れるだけで形が変わっていく。心地の良い土の感触を楽しみながら、イメージをふくらませる。

28→←26 作者より



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作者名:orange | 作成日時:2022年12月27日 14時

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