群青の星 (ページ22)

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『忠義、沖まで行ってくるよ。』

『うん。』

「いつもは数人で行くのに、その日はたまたま二人。天気が崩れるから気をつけなさいと、ランチを買った店で言われてた。泳がないわたしが買い出し係。天気が崩れるなんて、大したことないって思ってた。でも…」

『ヘイ！！嵐が来るぞ！戻れ！』

『え…』

「慌てて海を見ても、彼の姿はなかった。さっきまでの青空はすでに真っ黒。彼も途中で気づいたはず。でも、戻って来なかった。」

「大雨の中、雷の音が近づいて、そこに駆けつけた数名に体を引っ張られながら、必死で彼の名前を叫んだ。何度も助けてって…お願いします…って…。知り合いが、目の前でいなくなるなんて、そんなこと信じられなかった…」

「大倉さん…」

「誰もわたしを責めなかった。自然を甘く見たのは彼だって。でも、俺のせいやんか…。天気が崩れるって聞いてたんやから。自分を責めて、でも同じように死ぬなんてことは出来なくて、無知な自分が情けなくて…」

なんてことやろう。何も言葉が出ない。大倉さんの心の痛みが伝わる。最早どうすることも出来ないけど、何度も何度も考えてしまうんだろう。

そっと大倉さんの肩にふれる。いたわるように背中を撫でて。言葉は出てこない。でも痛そうな心をなんとか撫でてあげたくて、繰り返し繰り返し手を動かす。

「ありがとう…」

聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声。もう少しだけ。大倉さんが動けるようになるまで。痛みが少しでも和らぐことを願いながら、その背中を撫で続けた。

◇

「え、風邪？」

昼休憩、いつも来てくれる村上さんが来ないから連絡をすると、今日は休んで家にいるらしい。

「会社に連絡したら天変地異が起こるって言われたわ。」

「ははは！確かに。村上さん、無敵そうやもんな。」

「ちゃんと熱もあるし、正真正銘、風邪や。病院の先生もそう言っとった。」

相変わらずよくわからん言い方をする村上さん。

「俺、今日営業先から直帰出来るし、何か買っていきますよ。欲しい物あります？」

「ええよ、そんなん。」

「いや、いいですよ。」

「ほーか？じゃあ…」

「え、ちょ、メモ…」

結局めっちゃ頼まれた。夕方、普段ほとんど買い物をしないから、レジ袋の詰め方もよく分からずぐちゃぐちゃに詰め込んで、初めての道を急いだ。

「すまんな。」

マンションの下でインターホンを鳴らし、鍵を開けてもらって入ろうとしたら、透き通るような白い肌の男性が走ってきた。