群青の星 (ページ3)

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「脇が甘いというか、ボーッとしとるというか。周りの人間がお前の言動にイチコロになってんの知らんか？」

「イチコロ…？」

「そーや！あんたが今日何食べたや、こっち向いて笑ったや、ミステリアスや言うて妄想の対象になってんで。」

知らなかった。飲み会でも何でも盛り上げ役でおちゃらけてるし、会社でそういう対象として見られているとは思ってもなかった。

「俺、お前みたいな真面目で無器用な奴、結構好きやし放っておかれへんねん。だから一緒につるんだるわ」

「え…？」

「ほな、よろしく！」

「あ〜…はい。」

という返事は届いたのか。言いたいことだけ言って、さっさとどこかに立ち去る村上さん。訳が分からず立ち尽くしていたけど…

「ふふ。」

あれ…。なんやろ。人といて楽しいと思ったのは何時ぶりやろうか。俺のこと、こんなにも見てくれる人がおったなんて。

「マルちゃん、機嫌良さそうやん。」

「まあね。」

「今日は俺とどう？」

「マルちゃん、今日は俺とやろ？」

「ん〜…今日は帰ろっかな。」

「おい〜、せっかくタイミング合ったのに、それはないやろー…」

「また機会があればね。」

たまには僕も早く帰って寝てみよう。今日は一人でも大丈夫。ゆっくり休めそうな気がする。

◇

「最近お前顔色ええやん。」

「そうですか？」

「いっつもドブのような顔色やったからな。」

「ドブって…」

あれから半月ほど。村上さんは毎日当然のように俺のことを誘いに来て、古くからの友人のように自然に飯を食べている。

「あ！そういや得意先から陶芸展のチケットもらったんや。お前、興味ある？」

「陶芸なんて全然…」

「そやろな。そんな顔してるわ。」

「え…」

「お前、もっと趣味を広げろ。これ、行って来い。どうせ何も予定ないやろ。」

「ないことは…」

「あかんあかん！適当な奴引っ掛けて遊んでても良いことない。」

「え？」

「ほら、図星や。」

「な！そんなこと…」

「もっと違うとこに思考を使え。しょうもないことで悩んでてもあかん。」

「悩んでなんか…。ていうか、僕のこと…」

「俺もそうやから。」

「え？」

「お前と同じ。」

そうか。今更やけど、あまりの勢いに疑問に思う暇もなかったというか、自然すぎてスルーしてたけど、そもそも課長に狙われてるとか、適当な奴引っ掛けるとか、僕のこと、バレてるやん。