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「え?」

後ろから声をかけられて驚く。

「いや、帰り道で…」

「駅とは反対やで、この道。」

「そうなんですか?ありがとうございます。」

何となく気持ち悪くてすぐに立ち去ろうと歩き出した。

「なあなあ、俺暇やねんけど。」

でも、すぐに追いかけてきた少し年配のそいつに腕を掴まれた。気持ちの悪さに体がこわばる。

「は、離してもらえます?」

いや、俺も男やし。こんなおじさんに負けるわけない。でも、思い切り腕を引っ張っても掴んだ手は離れない。

「ちょっとええやん。話くらい付き合ってーや。」

「い、嫌です、離してください。大声出しますよ。」

「ふっ。可愛いなぁ、兄ちゃん。」

男の手が伸びる。頬にふれる。嫌だ。でも声が出ない。必死に逃げようと全力で突き飛ばすと、逃げた背中に体当たりをされ覆いかぶされる。

「やめて…」

「大声、出さへんの?ふふ。怯えて、震えてるやん。」

情けない。大の男がこんな奴に押し倒されて動けないなんて。体を強張らせて抵抗するけど、羽交い締めにされてはどうしょうもない。

「なんか、あんたの体、柔らかいな。」

気持ち悪い手が体を這う。昔のことを思い出す。無理やり欲の捌け口にされた。あれは誰だったろう。確か10歳は年上の…

「丸山さん!!お前!何してんねん!!」

体がふっと軽くなる。さっきまで近くにあった気持ち悪い息づかい。そこからようやく解放された。

「丸山さん。丸山さん!!」

大きな声に顔を上げると、そこには大倉さんの顔。

「な…んで…?」

「電話のあと、追いつけるかなって思って探しながら駅に向かってたんです。でも全然見当たらなくて、遠回りしたんやろうかってこっちに来てみたらこんなことに。」

ゆっくりと手を引っ張って地べたに座らせてくれる大倉さん。でもガタガタと震える体をどうしようもできない。

「大丈夫。もう大丈夫ですよ。」

何度も背中をさすられて、次第に落ち着いてくる。

「す…みませ…情けない…男やのに…」

震える声に優しい声が答えてくれる。

「関係ないですよ。変なやつ多いから。そんなこと気にせんと。ね?」

あたたかい手が今度は頭を撫でてくれる。優しいぬくもり。

「しかし、ほんまにあのまま帰ってなくてよかった。ちょっと時間かかるけど、警察に行きましょう。巡回してもらわな不安やわ。立てる?」

服についた砂を丁寧に払ってくれる大倉さん。ゆっくりと歩き出したのについていく。

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作者名:orange | 作成日時:2022年12月27日 14時

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