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「ただいま〜」
翌日、マルが帰ってくる。恋人に会ってきたはずやのに、なんでそんな顔してんねん。
「おかえり。村上さん、元気やった?」
「…うん。」
目を合わさず部屋に戻っていく。週末のルーティーン。はぁ。今日も雨かな。なんとなく、最近の週末は雨が多い。
「亮ちゃんは、大学卒業したらどうすんの?」
夕食後、リビングで寛いでいるとマルが隣にやってくる。
「いや、まだ考えてない。でも、親父と同じ道かな…」
「亮ちゃんはSPの仕事、興味あるんや?」
「え?いや…。でも、お前のSPを引き継がんとあかんって思ってる。」
「えー!そんなん、いいよ!亮ちゃんはちゃんと自分の道を考えてよ。」
「はぁ?俺以外に誰がお前を守んねん?」
「俺なんかどうにでもなるよ。」
「ならへん!お前には俺しか…」
「大丈夫やって。」
「違う…」
「ん?」
「…いや…俺…俺はお前のこと…」
「亮ちゃん?」
言葉が続かない。俺がこいつに自分の気持ちを打ち明けたら、こいつは困るやろ。そんなこと誰よりもわかってる。
「マル。お前、苦しくないんか?」
「え…?」
「相談したいこと、あるんちゃうの?」
じっとうつ向いて動かなくなるマル。いくら親父とはいえ、マルのプライベートが俺に伝えられることはない。
「…亮ちゃん…俺…」
何かを言おうとしてまた口を閉じる。俺には…言ってくれへんのか…
「亮ちゃん、そんなん、別に何もないよ。」
「お前!お前が落ち込んでんの、俺がわからんとでも思ってんのか?」
「亮ちゃん…。別に落ち込んでなんかないよ。ほんまに何もないで?」
「何もないわけ…」
「亮ちゃん、ありがとう。いつも心配してくれて、出来のいい弟みたいに思うわ。」
「…俺は…」
遠い。こんなに近くで、誰よりも近くで過ごしてきたのに。こいつの心が遠くて、遠くて…俺には掴むことが出来ない。
「こんなに出来のいい弟の将来くらい、兄として応援させて?」
「は?」
「俺にとらわれず、亮ちゃんにはちゃんと夢を持ってほしいねん。」
「何を言ってんねん?」
「小さい頃からずっと隣におってくれて、俺はほんまに幸せやった。でも、亮ちゃんには亮ちゃんの人生がある。俺は大丈夫。頼りないかもしれんけど、これでも歳上やで?」
「どういうこと…?」
「ほんまにSPに興味があるんやったら応援する。でも、俺のためにって言うんやったらやめてほしい。亮ちゃんはほんまに才能の塊や。もっと色んなことに挑戦して?」
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orange(プロフ) - ありがとうございます!コメントをいただけてとてもうれしいです。更新、少しのんびりしますが、よろしくお願いします☆ (2021年4月24日 18時) (レス) id: 7529fcda00 (このIDを非表示/違反報告)
akao(プロフ) - はじめまして^_^いつも更新楽しみにしています☆2人がどうなっていくのかワクワクしてます^_^これからも更新無理なく頑張ってください^_^ (2021年4月21日 19時) (レス) id: 078dcaab9a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:orange | 作成日時:2021年3月21日 20時