三十三話 ページ35
俺がカリムさんを軽く脅した後日、やたら辺りが騒いでいることに気が付いた。
禍々しいほどの匂いと、殺意、悪意、敵意、嫉妬、妬み、という感情がぐるぐると渦巻き吐き気がこみ上げてくるのを必死で堪える。
気づけば、目の前にはジャミルさんがカリムさんに対して、「小さいころから大っ嫌いだった！」などと感情を爆発させていた、多分、アズールやフロイドやジェイドのお陰で、作戦は失敗に終わったんだろう。
もうそろそろ潮時か、と陰から彼らの様子を見届ける。
しかし、ジャミルさんが何かを叫ぶとともに、辺りの寮生が何かに洗脳され始めた、途端に彼らがアズール達を攻撃するように取り囲む。
「まずいな……」
俺がそう囁いた途端、爆発と衝撃音と共にジャミルの姿が変わった。禍々しいほどの鬼気、喉の奥が痺れていたい。
ゲホッゴホッ、と俺が喉を押さえて崩れ落ちるとともに、何かが吹き飛んだ。薄れていく視界の中で見えたのは吹き飛ばされるカリムさんやジェイドたち。
「おいおい……嘘だろ」
ハハッと軽い笑い声が俺の口から零れる、この状況を一人でどうにかしろってか、軽い舌打ちがAの口内で弾けた。
まだ咳が終わらず、ゴボッと小さく零す俺に、洗脳された寮生達が拳を振り下ろした。その瞬間、シュル…、と目にも止まらぬスピードで何かが動き、寮生を縛り上げる。
植物だ。それらが寮生達の手首を拘束し、動けないようにしている。
「動かない方がいいぞ、多分折れるから」
擦れた声でそう目線を持っていき、注意する。すると、抵抗しようとしていた寮生達は動きを止めた。
今、俺がやるべきことは被害を出来るだけ出さないことだ。
そう胸に決心し、Aの唇が動く。
苦しい、息を吸えば、ジャミルさんの禍々しい魔力が口内に入り喉が焼けるように痛い。しかし、今、やらなければ、アズール達が帰ってくるのも分からないのだから。ジャミルさんの暴走を止めなければ、彼は魔力の使い過ぎで死ぬ。そうなればカリムさんは精神的に完全に死んだも同然だろう。
それだけはなんとかしないと。
弾丸を放つような、女の歌声があたりに響き渡った。男として自分が出せなかった高音の域を超え、ビリビリと肌が興奮として鳥肌が立つ。苦しい、しかしそれでも楽しい。
冷めない熱情と、乾きにも似た渇望。
前世でバンドをやってた時の興奮が背中から押し寄せ、胸の高鳴りを最大限に歌にして吐き出す。
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レオ - とっても面白いです。続きが気になります。 (1月4日 8時) (
レス) @page48 id: 8c9a5c91e3 (このIDを非表示/違反報告)
夕闇柳 - たまたま30話見ていてカリムがカルムになっていました。 (11月25日 8時) (レス) @page31 id: a9dd4c9262 (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - ふぎょあ、完結されてるんですね…この作品、めちゃ好きです。まだ占ツクにログインしてなかった頃、読みまくってました笑 ねっとり様に届くか分かりませんが、更新、お疲れ様でした。ほんとに本当にこの作品がこれからも大好きです！！！！！！ (6月26日 7時) (レス) @page48 id: 154e73901c (このIDを非表示/違反報告)
ねっとり - 雨中猫さん» アカウントを作っていなので急遽この形ですが作者です。コメントありがとうございます。「命に嫌われている」素敵ですよね、番外編でも他の歌とかも書いてみたいので気長に待ってくれると嬉しいです (2022年2月5日 23時) (レス) id: ad0790befa (このIDを非表示/違反報告)
雨中猫 - 主人公ちゃんに命に嫌われている歌ってもらいたいです！ (2022年2月4日 19時) (レス) @page27 id: 79b86edfa1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ねっとり | 作成日時：2022年1月20日 16時
