二十八話 ページ30
俺は軽く声を出しながら、首元をぐりぐりと抑える。
あの後はどうなったのかと言えば、フロイドに裏声を出してみろと言われ精一杯の女声を披露したのだが、「ひっくッ！」と一層されてしまい。結局アズールさんのユニーク魔法なんちゃらを使って女の声を手に入れた。その変わりに俺の生活の所有権は完全にアズールさんにある。
やはり生物上、女と男ということもあって普段と声の感覚が違い、不意に違和感に襲われる。耳に聞こえるくらいに声のトーンを慣らしていくが未だに苦手な方だ。
「てか……女ってのは随分声が高いんだなぁ」
改めて女子の声の高さ特有の歌い方や発声の仕方を痛感し、ぐっと息詰まるのを感じた瞬間。俺の前にいた踊り子の女子が声をかけてきた。考えてみれば、踊り子の女の人たちと一緒にじろじろと男子高校生の視線を嫌でも感じてしまう。
それもそうだ。この踊り子の女の人達。どれも美人さんぞろいなのだから。女子もいない男子校の中露出の多い格好は目に毒だろう。俺は出来るだけ男子の視線を踊り子たちに見せられないように、壁になるように立つ。
男子の好奇な視線に戸惑っていた踊り子を隠すような形で俺は壁に手を付ける。
「あっ…ありがとう」
「いえいえ、お気になさらず」
ポッと踊り子の少女の頬が色ずくと同時に俺は偵察に向かうべくスカラビアの寮へ向かった。
＊
やはり、スカラビアに入ったとて踊り子に対する視線はやや弱まった。真ん中の大きなテーブルを挟んで中央にいるどこか明るく笑っているのが多分ここの寮長のカリムさんなんだろう。
クーデターが起こりそうなのに、随分気ままだな、と軽く肩の重荷が消え失せるのを感じ。俺は配属されたところにもぐる。
歩くたびに、シャラン、と頭の金属製の飾りがなり落ち着かない。赤を基調とした衣装に大袖は金糸の刺繍。いつもと違う、極力肌を見せ通気性をよくした格好に内心うんざりすると同時にバチっと視線がカリムさんと合ってしまった。
目が合っておいて無視をするのは失礼だと思い、軽く微笑む。すると、バッと顔をカリムさんは俺から離した。
マジでごめん。メイクで俺なりには美人になったつもりなんだが、こんなことは本当の美人にされたからかそ嬉しいんだろうな。ごめんな俺不細工で。
と軽く自尊心がすり減るのを感じたが、おかげでやっと本題に気づけた。
「よし、取り合えず行きますか」
俺は薄い衣を手に取り歩き出した。
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レオ - とっても面白いです。続きが気になります。 (1月4日 8時) (
レス) @page48 id: 8c9a5c91e3 (このIDを非表示/違反報告)
夕闇柳 - たまたま30話見ていてカリムがカルムになっていました。 (11月25日 8時) (レス) @page31 id: a9dd4c9262 (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - ふぎょあ、完結されてるんですね…この作品、めちゃ好きです。まだ占ツクにログインしてなかった頃、読みまくってました笑 ねっとり様に届くか分かりませんが、更新、お疲れ様でした。ほんとに本当にこの作品がこれからも大好きです！！！！！！ (6月26日 7時) (レス) @page48 id: 154e73901c (このIDを非表示/違反報告)
ねっとり - 雨中猫さん» アカウントを作っていなので急遽この形ですが作者です。コメントありがとうございます。「命に嫌われている」素敵ですよね、番外編でも他の歌とかも書いてみたいので気長に待ってくれると嬉しいです (2022年2月5日 23時) (レス) id: ad0790befa (このIDを非表示/違反報告)
雨中猫 - 主人公ちゃんに命に嫌われている歌ってもらいたいです！ (2022年2月4日 19時) (レス) @page27 id: 79b86edfa1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ねっとり | 作成日時：2022年1月20日 16時
