ｼｭｶﾞｰｼｭｶﾞｰｼｭｶﾞｰ (ページ45)

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ｻｲﾄﾞｽﾄｰﾘｰ ⑩ ページ45

・イチョウ並木

・川西side

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　写真を撮るあなたの横顔が綺麗で、見ていたい気持ちもあるけど写真ばっかりになって欲しくなくて、ちょっとでも振り向いて欲しくて、僕はわざと音を出してシャッターを切った。

　イチョウ並木。この季節ならではの光景を見ようとAと打ち合わせ場所に行く途中に寄ってみた。

　秋晴れで木々の隙間から光が差し込んでいる。黄金色の葉が反射していて輝いている。

　平日の午前中ということもあってか、人はまばらで子ども連れのお母さんぐらいしか見かけない。

　小さな女の子が落ち葉を拾って集めている。

　僕も子供のとき集めてあったな。なんの価値なんてあらへんのに道に落ちてる葉っぱとか石っころ手に取って。意味もないのに親に見せたりして。

　などと思い出していると、隣にいる彼女は地面に落ちている葉を蹴って遊んでいた。

　口角が上がっていて楽しんでいるようだ。無邪気な彼女がなんだか子供みたいで可愛いと思った。

　しばらくの間遊んだあと葉っぱに飽きたようでスマホを取り出して写真を撮っている。さっきとは打って変わって真剣な顔に見とれてしまう。

　写真を撮るあなたの横顔が綺麗で、見ていたい気持ちもあるけど写真ばっかりになって欲しくなくて、ちょっとでも振り向いて欲しくて、僕はわざと音を出してシャッターを切った。

　そして悪戯な笑みを浮かべて彼女は振り向いた。

　「写真撮ってるAを撮ってみたわ」

　僕は今の気持ちを悟られたくなくていつもの笑顔で言った。

　だって、振り向いて欲しくてわざと音出したってかっこ悪いやないか。

　「えーじゃあ、私も撮るー」

　これ持ってと落ち葉を渡された。ハイチーズ。

　撮られる度にこんなおっさんの写真のどこに需要あるんかと思うが、今は別。僕のこと興味あるのかな、なんて。都合のいい脳みそだ。

　「今のスマホめっちゃ画質ええな。Aの最新のやつやろ」
　

　画面を覗き込むようにして見る。

　これポートレートって言うんやっけ？僕にピントあってて背景がぼやけとる。

　「これインスタに載せてもええ？」

　身長差があるおかげで彼女が自然と上目遣いになる。

　男はこうゆうのに弱いんよ。

　ましてや惚れてる子にされたら。

　僕はいつもの照れ隠しで右耳の耳たぶを触りながらええよと言った。

　写真のなかで黄金色に輝いているイチョウ並木に負けないくらい彼女は映えていた。

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