× 42 ページ42
漏らした声は小さくも、
はっきりと永瀬の耳に届いていた。
痛い程真っ直ぐに見つめてくるその視線から
目を逸らそうと思った瞬間。
後頭部に腕が回って、
永瀬の柔らかな唇が強引に押し付けられた。
足元に、ペットボトルが転がる。
永瀬の好きな、甘ったるいフルーツ味のガムの微香が、
吐息を伝って鼻を掠めた。
行き場のなくなった手で、恐る恐る永瀬のTシャツの裾を
握りしめると、それに反応したのか更にキスの濃度が増して、思わず吐息が漏れた。
吸い付くように永瀬の唇が触れて、名残惜しげにゆっくりと離れる。
ただそれだけの繰り返しを、角度を変えて何度も。
やっぱりキス上手くてムカつくなぁとか、
今誰かに見られたら終わりだなぁとか、
まともに機能しない頭の片隅で、いやに冷静な自分がいる。
“俺は俺に好意持つ子を拒まんだけ”
あの日の言葉が、今の状況を嘲笑うかのように
フラッシュバックする。
永瀬は、私を好きじゃない。
分かっているから、返事を求めようとはしなかった。
永瀬が私を特別な存在として好きじゃなくても、
今は、私を見てる。
それだけで拒む理由を失う私は、
完全にその毒に侵されているのだと思う。
あまりの気持ち良さに腰が砕けそうになると、
永瀬の手が腰に回って、力強く抱き寄せられた。
『なんや、さっきまでの
強気なAちゃんはどこいったん？』
白い歯を覗かせて不敵な笑みを浮かべる。
この顔、本当にずるい。好きに決まってる。
「……うるさい」
『でも好きなんやろ？』
「………やっぱり、好きじゃない」
永瀬ばっかり余裕なのが癪に触って、胸をドンドンと叩くと、その手を掴まれて、今度は噛み付くようなキスが落とされた。
今だけは、誰にも邪魔されたくない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2258人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Fujisaku888(プロフ) - やっば！やばやばです！もう最高でした！続き、楽しみに待ってます！！！！！ (2019年8月12日 21時) (
レス) id: d78f9adad7 (このIDを非表示/違反報告)
reeein(プロフ) - もう、天才だと思います。テスト期間の唯一の癒しです、続き待ってます！！ (2019年7月23日 1時) (レス) id: d8f0974525 (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - やっぱり、いいですねえ〜( ´ ▽ ` ) (2019年7月21日 16時) (レス) id: 383a94bb9b (このIDを非表示/違反報告)
禊(プロフ) - みさとさん» 嬉しい〜〜です〜〜！！！まだしばらく続く予定ですので引き続きお願いしますね〜〜！o(^-^)o (2019年7月21日 9時) (レス) id: 877a6ff071 (このIDを非表示/違反報告)
禊(プロフ) - reeeinさん» ワ〜〜！コメントありがとうございます（ ; _ ; ）なんとかかっこいいキャラのまま走れるよう頑張ります〜〜！(？) (2019年7月21日 9時) (レス) id: 877a6ff071 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：禊 | 作成日時：2019年6月17日 23時
