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50話和side ページ1

案の定回診でまわった患者さんみんなに顔色を心配された。

大丈夫とはいえども不調に見えるうちは何も言っても信じてもらえないからと診察は早々に終えて医局に戻る。

途中Aのところに寄ろうか迷ったけど少し仮眠取ったあとでも遅くはないだろう。

「仮眠室借りますー」

少し張った声は誰も居ない医局ではいつもの倍響く。

鉄筋張りの部屋は防音なんてされず冬は寒く夏は暑い。

そんな部屋で俺たちは仮眠を取らなければならないから俺たちは個人でどうにかしなければならない、ってことで俺は今朝シャツを取り出したロッカーから愛用の上着と薄い掛け布団を取ると一番奥のベッドに横になった。

この歳で徹夜した分相当疲れていたのか眠りに落ちるまではそう時間がかからなかった。

翔「…ず、か…ず、」

しばらく寝ていたんだろう。誰かに肩を揺すられ意識が戻る。

和「んっ、はい…」

翔「和、起きろー」

和「え、あ、翔くん…」

翔「どう、具合は」

和「んあ…だいぶいいですね」

翔「もうすぐ潤がくるからそれまでは横になってるんだぞ」

和「えぇ？潤くん？誰か急変ですか？」

そう言い速やかに起き上がるとベッドから足だけを下ろしあくびをしつつ耳を傾けた。

翔「急患じゃなく和の迎えに」

いまいち理解のできなかった言葉に思わず聞き返す。

和「誰の迎え？」

翔「あなただよ」

やはり耳に届いていた言葉とは何も変わらない言葉が返ってきた。

和「俺何かしましたっけ？」

翔「和くん、君はさっきまで熱があったんだよ」

和「え、俺が？」

翔「そう。回診終わって仮眠室に寄ったらあなたが真っ赤な顔して荒い息繰り返してるもんだからさ」

和「うそ…」

翔「それで潤くんが解熱剤入れてくれてしばらく様子見てたの。さっきまで智くんも来てたんだよ」

和「言われてみればずっとだるかったかも」

翔「そういうことは先に言いなさい」

和「ご、ごめんっ」

翔「今日はもう帰ってゆっくり休んで」

それからすぐ仮眠室と医局の繋がるドアが開いた。