・ ページ14
·
「すみません、ハイボール」
『ハイボール？珍しくない？』
「うん、最近飲むようになって。おいしそうだったから」
『おいしそう、』
「人のものって、良く見えるじゃん。何でかわかんないけど」
『あー、何となくわかるかも』
「それが好きな人だったら、そりゃ余計に」
そういえば、Aは影響を受けやすいひとだった。
その“元彼氏”の影響でAは洋楽を聴くようになったし、やたらとラーメンに詳しくなった。変わっていくAを見る度に、すこし寂しくなった。俺がAに勧めたポップスや定食屋は、Aの人生には入り込めなかった。
「十年も一緒にいたらさ、身の回りのもん全部あいつとの思い出になっちゃってて。もう目開けてるのもつらいよ」
『そっか…』
「…ふふ、なんか、貫ちゃんがそんな真面目な顔してるの久々に見たかも笑」
『え？俺はいつでも真面目だろ』
「いやいや、え？貫ちゃんってそんな顔だっけ？笑」
ハイボール片手に泣きそうになりながら笑っている、Aを見た。複雑に感情が入り交じった不思議な顔をしていた。
『…あのさ、何で俺呼んだの？』
「え、何でだろ、通話履歴の上の方にいたから？笑」
『なんだよそれ、めちゃくちゃ適当じゃねえか笑』
「考えて選んでる時間なかったわ笑」
『なんか腹立つなぁ』
「ごめんって、笑」
『あーもう、一人で喜んでたのにめちゃくちゃ恥ずかしいじゃん』
「え？笑」
『Aに誘ってもらえるなんて、なかなかないから』
「まぁ、そうね」
『なのに適当に選んだとか言うからさあ』
「それはごめん笑」
『しかも別れ話まで聞かされて、マジでどういうつもりなんだよ』
「ごめんごめん、笑」
『ほんっと良くねえわ、無意識に期待させるようなことして』
「期待？」
『二人きりで飲んでる途中にさ、彼氏と別れましたとかそんな、“今 私フリーです”宣言されたら、そりゃ期待するだろ』
「…ん？笑」
本当にわかっていないのか、わかっていないふりをしているのか。
Aはずるいから、きっと、わかっていてそんなふうにしているのだろう。そういうところは嫌いだ。そういうところだけは。
·
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 437人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぐり - 初めまして！雰囲気が好きですべて一気読みさせてもらいました🥹マユリカ阪本さんのお話読みたいです。時間がありましたらぜひお願いします(^^)v (5月11日 13時) (
レス) id: 0e2050f731 (このIDを非表示/違反報告)
とこ(プロフ) - いつもにやにやしながら読ませて頂いてます！ リクエストなのですが、ヤーレンズの出井さんのお話お願いできませんでしょうか？？哀さんのペースで大丈夫なのでよろしくお願い致します！ (2023年4月22日 22時) (レス) id: 6bae7fb429 (このIDを非表示/違反報告)
まゆゆん - 哀さん» こちらこそありがとうございました！素敵なお話でした✨ (2023年4月9日 11時) (レス) @page42 id: 4336aaf71d (このIDを非表示/違反報告)
哀(プロフ) - まゆゆんさん» リクエストをいただいていた多田さんのお話を公開しました。コメントを読み違えてしまい、彼女設定ではありません。申し訳ございません🙇🏻♂️リクエストありがとうございました！ (2023年4月9日 9時) (レス) id: 8ce96fbb9e (このIDを非表示/違反報告)
P-398(プロフ) - リクエストです！D.Shibaさんの恋人だった主人公が事故で亡くなってしまう話を（死ネタ不可でなければ）お願いします！ (2023年3月17日 17時) (レス) id: 2cc94b219c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：哀 | 作成日時：2022年5月5日 10時
