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ミルクティー / K.Yamamoto * ページ11

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「おはようございます…って、え!?Aちゃん、どうしたの?」
『あぁ、山本さん…おはようございます』


今日のテレビ収録の楽屋はタイマさんと同じらしく、早く着きすぎてしまった私の次に山本さんがやって来た。

畳が敷かれている和室っぽい楽屋で、私はその畳の上にうずくまって寝転がっている。


「いやいや、え?どうしたの?」
『いや…全然、大丈夫です』
「大丈夫な人の体勢じゃないでしょ、具合悪い?」
『…ちょっと、お腹と頭が痛くて』
「収録大丈夫?無理しない方がいいよ」
『大丈夫です、いつも気合いで乗り切れるんで』
「気合いって…」


眉を八の字にして険しい顔をしている山本さんが、とりあえず、と言って衣装のジャケットを掛けてくれた。


『いいのに…』
「何言ってんの。身体は大切にしないと」


エアコン寒くない?あったかい飲み物とかいる?
落ち着きなくうろうろと楽屋を歩き回りながら尋ねられた。
焦ってるのかな、心配してくれているのかも。山本さんは良い人だから。


『んー…じゃあ、申し訳ないんですけど』
「いいよ、何でも言って」
『あったかいミルクティー、飲みたいです』
「わかった、任せて」


すぐ戻ってくるから!と勢いよく飛び出したその人の背中を見て、思わず口角が緩む。まったく、どこまでも優しいひとだ。

息を切らした山本さんは本当にすぐに帰ってきて、ミルクティーを大事そうに両手で包んでいた。


「大丈夫?起き上がれる?飲める?」
『大丈夫ですよ笑 本当にありがとうございます』
「気にしないで。俺はAちゃんの元気な顔が見たいだけだから」
『ふふ、やさしいんだなぁほんとに』


あたたかいミルクティーはじんわりと身体に染み込んで、やさしい。


『あったかいです』
「そっか、よかった」
『だいぶ楽になりました』
「ほんと?無理はよくないからね」
『ほんとですよ、山本さんのおかげで』
「なにそれー」


山本さんの大きな手が伸びてきて、ふわふわと頭を撫でられる。その目尻によったしわが愛おしくて、甘いな、と思う。あったかいミルクティーみたいに、やさしくて、甘い。


『私、ミルクティーが一番好きなんです』



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ぐり - 初めまして!雰囲気が好きですべて一気読みさせてもらいました🥹マユリカ阪本さんのお話読みたいです。時間がありましたらぜひお願いします(^^)v (5月11日 13時) (レス) id: 0e2050f731 (このIDを非表示/違反報告)
とこ(プロフ) - いつもにやにやしながら読ませて頂いてます! リクエストなのですが、ヤーレンズの出井さんのお話お願いできませんでしょうか??哀さんのペースで大丈夫なのでよろしくお願い致します! (4月22日 22時) (レス) id: 6bae7fb429 (このIDを非表示/違反報告)
まゆゆん - 哀さん» こちらこそありがとうございました!素敵なお話でした✨ (2023年4月9日 11時) (レス) @page42 id: 4336aaf71d (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - まゆゆんさん» リクエストをいただいていた多田さんのお話を公開しました。コメントを読み違えてしまい、彼女設定ではありません。申し訳ございません🙇🏻‍♂️リクエストありがとうございました! (2023年4月9日 9時) (レス) id: 8ce96fbb9e (このIDを非表示/違反報告)
P-398(プロフ) - リクエストです!D.Shibaさんの恋人だった主人公が事故で亡くなってしまう話を(死ネタ不可でなければ)お願いします! (2023年3月17日 17時) (レス) id: 2cc94b219c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2022年5月5日 10時

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