▼序章 桃から生まれたのは ページ1
・
むかーし、むかし、あるところに年老いた夫婦が仲睦まじく暮らしておりました。
夫婦はとても子供を欲しがっていましたが、二人にはなかなか恵まれることなく年月は酷にもだいぶ過ぎたある日のことです。
お爺さんは山へ芝刈へ、お婆さんは川へ洗濯へ。
「お爺さん、お気をつけてくださいな」
「婆さんもな」
互いの無事を祈り、お婆さんはいつものように川で洗濯をしていた時のことでした。
川上の方から見た事もない大きな桃が、どんぶらこ〜、どんぶらこっこ〜と流れてくるではありませんか。
「まあ！まあまあまあ！ これは立派な桃じゃこと！持って帰ってお爺さんと食べようかしらね」
と、そんなに大きな桃をどうやってお婆さんは家に持って帰れたのかは謎が残りますが、なんとか家へと桃を持ち帰ったのです。
お爺さんが帰ってくるのを待ち、ガタつく扉を「どりゃ！！」と勢いよく開けたお爺さんは、視界に飛び込んできた大きな桃に腰を抜かし……かけたが、ふんばりました。
「な、なんじゃこりゃ？ 婆さん、これをどうした？」
「洗濯していたら川上から流れてきたんですよ。さあさあ、お爺さんや切ってくださいな」
これだけ立派な桃です。さぞかし味も極上なことでしょうと、美味しいものに目がないお婆さんはじゅるりと垂れた涎を拭います。
「よし、切るぞ！」
ふん！と、包丁を差し込みましたが、おおきな桃は傷一つつきません。
えい！えい！と、何度も刺してようやく切り込みを入れ、グイグイと二人で左右に引き割りました。
「んなっ！？」
「あら、あらあらあら！」
なんということでしょうか。桃を切ると中に居たのは、たまのように可愛い赤子です。
「おんぎゃ！おんぎゃ！」
とても元気よく泣き始めました。
お婆さんは赤子を抱くと、瞳を潤ませて歓喜に湧きます。
「これは神様からの贈物にちがいありません。私たちに子供ができましたよ、お爺さん」
「お、おう。そうだな」
何故そんなにすんなり受け入れているのだ婆さん、と若干引き気味のお爺さんでしたが、お婆さんの腕に抱かれて穏やかに眠る赤子を見ていると、その余りの可愛さに頬が緩みます。
「婆さん、大切に育ててやろうな」
「そうですね。大事に大事に、育てましょう」
こうして長年子に恵まれなかった老夫婦に初めて子供ができたというお話＿＿＿＿
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1623人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきんこ(プロフ) - 佐久間推しさん» コメントありがとうございます！一気に読んでもらえて光栄です。続きもそろそろ終盤ですのでどうぞ楽しんでください(^^) (2020年11月22日 23時) (
レス) id: 0a7632b1c0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - 佐久間推しさん» コメントありがとうございます！一気に読んでもらえて光栄です。続きもそろそろ終盤ですのでどうぞ楽しんでください(^^) (2020年11月22日 23時) (レス) id: 0a7632b1c0 (このIDを非表示/違反報告)
佐久間推し - お話が面白くて一気に読み進めてしまいました〜！！続きも楽しみです！ (2020年11月21日 8時) (レス) id: b5372a6ba4 (このIDを非表示/違反報告)
☆ゆきんこ☆(プロフ) - しーさん» ありがとうございます！！お話書かれてるんですね！？よし見に行かねば！！ いえいえ彼への愛があれば素晴らしい作品のはずです！一緒に楽しんで書きましょうね(^^) (2020年11月4日 9時) (レス) id: d7a99168d6 (このIDを非表示/違反報告)
☆ゆきんこ☆(プロフ) - しーさん» 鬼佐久間さんに是非惚れてください（笑）食べられて良いなんて言っちゃったら、今夜辺りに来ますよ？（笑）まだドキドキシーンがあると思いますが楽しんでほしいです！ありがとうございました！ (2020年11月4日 9時) (レス) id: d7a99168d6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆきんこ
| 作成日時：2020年10月24日 1時
