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再び目を覚ました時、一番最初に見えた物は漆黒の翼を纏った鴉だった。
鴉は目覚めた私に気付くと、何も言わず枕元に降りて、またまた何も言わず頭を私にすり寄せる。
『………し、るべ』
「ヨウヤットオ目覚メカ。案外遅カッタナ」
『……』
ごめん、と謝ろうとしたが、鎹鴉の名前を呼んだだけで消耗された体力のせいで次の言葉は出てこない。
導は私が喋れないことに関して何も言わず、ただ私に寄り添うだけ。
約束、守ってくれた。
『っ、……』
感謝の言葉すらも出ないクセに、私の両目からは留まることなく雫が流れ落ち、擦り寄っていた導の嘴を濡らしていく。
いつもなら「何泣イテンダヨ」とか言うくせに、こういう時に限っていつも通りになってくれない。
ごめん、ごめんね。導。
君の主がこんなに弱くて。
でも、頑張ったよ。
一人で毒に立ち向かったんだ。
本当に頑張ったんだ。
「……今ハ昼ダガ、屋敷ノ見廻リハ先程終ワッタ。暫クハ誰モ此処ニハ来無い。溜メ込ンデタ不安モ、焦燥モ、何モカモ。全部流セバ楽二ナルゾ」
『っ…ぅ…ん』
言葉通り、泣け、と促すように導の翼が私の胸上を優しく叩く。
鎹鴉に慰められる隊員なんて過去も未来も私だけかもしれないのが情けなくて、ある意味泣けてくるが。
『(でもこうやって、誰かに認めて貰いたかったんだよ。私は、ずっと。)』
どけだけ蜜璃さんや伊黒さん、しのぶさんに褒められようが、心のどこかでそれを有難く受け取れなかった自分が居た。
けれど今の私なら、どんな賞賛も心の底から感謝して受け取ることが出来る。
『(……やっと、素直になれた)』
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そあ Free sky - 私は現実で愛されていないからですかね?愛されている夢主を見て泣いてしまいました。頑張ってください! (2019年10月6日 21時) (レス) id: 4b25111a5e (このIDを非表示/違反報告)
名無しの刃 - 富岡…?恐らく冨岡では…?偉そうにすみません… (2019年10月3日 23時) (レス) id: 7c2b7aa7df (このIDを非表示/違反報告)
まっち - 続編おめでとうございます!本当に面白いと思いました。これからも頑張ってください!応援してます。 (2019年9月22日 22時) (レス) id: d74e1015ce (このIDを非表示/違反報告)
銀炉(プロフ) - 初コメ失礼します、続編おめでとうございます!7話がなくて話が抜けてますよ!更新楽しみに待ってます! (2019年9月22日 13時) (レス) id: c268784eb7 (このIDを非表示/違反報告)
心(プロフ) - 続編おめでとうございます!更新頑張ってください! (2019年9月21日 23時) (レス) id: 2141c8a0fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:-naki- | 作成日時:2019年9月21日 23時