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遠征先での試合が終わり、また7時間かけて帰路につく。
着くのは深夜の予定だ。
(Aさん、待ってるって言ってたけど、寝ちゃうだろうな、)
携帯のメッセージで、
【先に休んで。おやすみ。】
とだけ送っておく。
その様子を見ながら隣に座っていたチームメートが、
ニヤニヤと笑っていた。
<え、何!?>
<ユーキ、幸せそうだな!>
<いや///そんなことないけど、////>
<顔がニヤけてるぞ。ずっと!>
そんなに緩んでるんだろうか、なんて思いながら、
何でもない。というと、チームメートは、
彼女は、どう?と心配そうに笑う。
<リハビリ頑張ってるよ。最近は少しジョギングなんかも始めてるみたいだね。>
<戻ってこれそうか・・・?>
<・・・・・どうだろうね。>
あの日以来、コートに入るどころか、ボールにすら触れなくなった。
リハビリが始まってからも、
歩けるようになってからも、
触れるどころか、見ることすらしなくなったソレを、
彼女がもう一度、望んでいるかどうかなんて、俺にはわからなかった。
(肝心なことは、いつも言ってくれない・・・、)
本当は、少しだけ怖かった。
貴女が隣でバレーをする俺を見てどう思ってるのか、
イタリアになんか来たくはなかったんじゃないかって、
ずっと心の中は不安でいっぱいだった。
深夜3時にようやく家に帰宅する。
メッセージを読んでいた彼女は、
ベッドですやすやと寝息をたてて眠っていた。
お風呂に入って、同じベッドに眠る頃には時計は4時を指していた。
「Aさん、」
彼女の柔らかな髪の毛に触れる。
あれから4ヶ月。
ショートヘアーだった彼女の髪の毛は少し伸びてきた。
いつもなら鬱陶しいと切っていた彼女が、
バレーをやめてからは少しずつ伸ばしていることを俺は知ってる。
伸びた前髪をはらいのけ、静かに唇にキスをする。
こんなに近くにいるのに、
触れ合えるのに、
心の中の寂しさや、葛藤、苦しみ、悔しさが拭いきれない。
貴女が壊れないように、
貴女を壊さないように、
そっと、抱きしめて眠りについた。
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いろは(プロフ) - ナオさん» 読んで頂きありがとうございます!大変な思いをされたんですね。この話はもちもんフィクションですが、ナオさんが大切な人と幸せでありますようにと、願っています。逆サイドの話検討してみます! (2020年3月15日 9時) (レス) id: aef4d38a58 (このIDを非表示/違反報告)
ナオ - とても楽しく読ませて頂きました!!これ、逆サイドの話しも読んでみたいです(* ´ ▽ ` *)私、彼と同じスポーツしてるのですが、事情があって私だけ辞めてしまったんです。おまけに今、左膝後十字靭帯損傷していて、めちゃ重なって思えて、余計刺さりました。 (2020年3月14日 11時) (レス) id: d85b846b30 (このIDを非表示/違反報告)
いろは(プロフ) - ユウカさん» コメントありがとうございます(ToT)嬉しいです!(^^)!次回作も頑張るのでまた読んで下さい(>_<) (2019年12月6日 22時) (レス) id: aef4d38a58 (このIDを非表示/違反報告)
ユウカ - 更新お疲れ様でした!本当に最高でした、何回も読み返そうと思います!次回作も楽しみです! (2019年12月6日 20時) (レス) id: 18559518cb (このIDを非表示/違反報告)
いろは(プロフ) - ユウカさん» コメントありがとうございます(^^)励みになります!更新頑張るのでまた見て下さいね!(^^)! (2019年12月1日 6時) (レス) id: aef4d38a58 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いろは | 作成日時:2019年11月24日 3時