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春。新学期。履修登録。
大学が2年目になっても、まだ春はソワソワする。
とはいえ特に新しい出会いもないし、大学生にもなれば特定の教授としか深く関わることもないのだけれど。
「…桜満開」
気分転換に外に出れば満開の桜。
新しい大きなランドセルを背負った小学生とその家族が笑顔で記念撮影をしていて、なんだか私まで嬉しくなった。
特に見返すこともないだろうけど、と桜にスマホのカメラを向ければおなじようにカメラを向けている人がいて。
メッシュの入った髪に金色のピアスとネックレス、ごつい時計、と私の中の『なんだか怖そう』を具現化したような見た目の人。
桜の写真撮るんだ、かわいい。
目が合うと見た目とは裏腹、照れくさそうに会釈をしたその人は
「お姉さんと桜で写真撮りましょうか?」
なんて初対面なのにジョークを飛ばしてくる強心臓の持ち主だった。
「…じゃあお兄さんと桜で撮りましょうか?」
「んーん、俺は大丈夫」
初対面なのにすぐに敬語が崩れた彼はどこか憎めなくて、ぐっと距離を縮めるのが上手い人だなと思う。
たしかあの人もそうだったっけ。
「…どしたの、大丈夫?」
「あ、全然全然、ごめんなさい」
すぐ思い出すのも意識飛んでっちゃうのも辞めたい。心配かけちゃった。
じゃあ、とすぐ別れた彼と話していた時間は1分にも満たないんだろうけれど、久しぶりに心地のいい時間だった。
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作者名:朔 | 作成日時:2021年10月9日 22時