祟り目。 ページ8
「おいA、大丈夫か？怪我は？」
腕を抑えながらこちらに歩いてこようとするサッチさんが見えた。服は赤く染まってる。
『ごめんなさっ…！』
「おい、A？」
『ごめんなさい、私が、私が悪い、私が死ねばよかったのに、なんで、ごめっ…ごめんなさい…！』
「A！！」
名前を呼ばれると、この世界に居場所があるように思えてしまうの。そんなの、あるはずないのに。
いつも陽気に笑いながら料理を奮っている腕が、なんの迷いもなく、人を殺したという事実。
だけど、あの場で皆が無事に終わる、なんてありえなかった。
彼が戦うのは、生きるためだ。目的のためだ。分かってる。それを、悪だとは思わない。思っちゃいけない。
────だけど。
海賊、という存在を分かってたはずなのに、何を甘いことを考えてたんだろう。
こんなことを考える私が嫌い。そんな資格なんてないのに、こういう甘ったれて偽善ぶってて、弱いところが。
もう頭がごちゃごちゃして、割れそうに痛い。何も考えたくない。
私がこんなだとサッチさんが悲しむかもしれない。笑わなきゃ。笑って『ありがとう』って言わなきゃ。
笑うのは得意でしょう？心のうちを隠して笑うのは慣れてるでしょう？
ねえ、私。
なのに、なんで、笑えないの。
「ありがとう」って言おうと思って開いた口から出てくるのは掠れた息と、「ごめんなさい」という子供じみた謝罪だけ。
元の世界にいたときのように酸素が薄い。息苦しい。胸の圧迫感が、どうしようもない重さで私にのしかかってくる。
酸素が、薄い。まるで、海の中に沈んでいくように、溺れていくように、息ができない。
『ごめんなさっ、い、ごめんなさい、ごめ…ケホッ、はっ…、』
「A落ち着け！ゆっくり息しろ！」
無理だよ。
目の前がくらくらして、手と足がだんだんと痺れていくような感じがする。
息を吐こうと思うのに、喉の奥に何かがつっかえてでもいるようにひゅぅっという変な音しかでない。苦しい。
『はっ…ひゅっ… ぁ…ごめんなさい、ごめんなさい、私が…っ！』
「大丈夫だから、ゆっくり息を吐け！な？！」
苦しくて、死んじゃいそう。ねえ、このまま息ができないまんまだったら、死んじゃったりしないの？
ねえ、神様、お願いだから ───
『 ─── 殺して 』
ほんと、くるしい。
周りの音が段々と遠ざかっていって、すうっと暗幕が引かれたように意識が黒く染まっていった。
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アップルパイ(プロフ) - お話自体も泣けるしあとがきで追い討ちかけてきた…最高すぎる作品です…‼︎ (2月28日 22時) (
レス) @page50 id: 0ce3ef1535 (このIDを非表示/違反報告)
ミキ(プロフ) - この話凄く好きです！最後の方泣きそうになりました笑他の作品も読んでみたいなって思いました！ (2月3日 6時) (レス) @page50 id: 8f0b2947d1 (このIDを非表示/違反報告)
ロイ - すんごくよかったです！ワンピースの作品を読んだのは初めてなんですけど、面白かったです！夢主ちゃんの優しいところがすごく好きです！ありがとうございます！ (9月2日 12時) (レス) @page50 id: 97a54b5f8a (このIDを非表示/違反報告)
ゆきの(プロフ) - 何年も前に読んだこの作品の内容をふと思い出して、必死に検索し続けてようやく再会出来ました。最後に読んでからこんなに年月が経っているのに、また読みたいと思わせてくれるような作品を作ってくれて本当にありがとうございます (8月7日 0時) (レス) @page50 id: 0f8f6ed9fd (このIDを非表示/違反報告)
いぶき(プロフ) - 凄く感動しました、エースとオヤジを生存させてくれてありがとうございます (2023年3月23日 7時) (レス) id: d33577c241 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちチーズ
| 作成日時：2018年2月3日 9時
