賽は投げられた。 ページ33
電伝虫の向こう、私の横、牢屋の向こう。
みんなが、息を呑むのが分かった。
『もういいです、行きましょう。あ、これ貰いますね。』
置いてあった日誌みたいなノートから紙を三枚くらい千切って一枚で血で汚れた手を拭く。
残りは適当に畳んでポケットに突っ込んだ。
ガープさんはエースの方をちらりと気にするように目線をよこして、私を抱えあげた。
「A！！」
ガシャン、と音がするけどもう振り向かない。ゆっくりと歩き出したガープさんが、しばらくしてから口を開いた。
「……わしが目を離した隙に何があったんじゃ。」
『エースには失望させられました。それだけです。』
なにか言いたそうだったが、私がこれ以上話す気がないのが分かったのか口を閉じたガープさん。
マントの中で揺られてるあいだ、ポケットにいれっぱだったペンと、紙を取り出す。
揺られてガタガタになりそうになるが、なんとか書ききった。文字が見えないように紙飛行機をつくる。
マントからそっと顔を出して辺りを見渡す。まだ、ここじゃない。あ、なんか囚人と目があった気が……でもあの人じゃない。
ドシン、と大きな足音が聞こえるフロアで、お目当ての人の姿がうっすら見えた。
(あ、あの人…！)
少しの隙間から、静かに紙飛行機を投げる。届け、と呟いた。その願いが届いたのか、紙飛行機がコツン、とその人の頭に当たる。
不思議そうな顔をして、それを見つめているその人に、賭けるしかない。
それからまた船に揺られ、たどり着いた海軍本部。待ち構えていた元帥さんが、こちらの姿を捉えた瞬間怒鳴った。
「ガープ、おまえは本当に……！」
そこで元帥さんがこちらを見た。
「……先程の電話でチラリと聞こえたのだが、火拳と何かあったのかね？」
こちらの様子を伺うように聞いてくる。今までは扱いにくい子供だったでしょ？もう大丈夫だよ。
『エースがあんな人だとは思いませんでした。あんな人のために貴方達に抵抗してバカみたい。洗脳されてました。』
憤りと、諦めを混ぜた気持ちで淡々と呟く。そんな私に、大人二人が目を少し見張った。
「……そうか、あいつは海賊だ。やっと分かってくれたか。」
元帥さんの言葉に、ガープさんは押し黙ったまま。
『いいですよ、異世界についてでもなんでも語ります。もう貴方達に無駄な抵抗はしません。』
「 ！ そうか、助かる。」
少し安堵したように頷く元帥さん。
───さあ、精々騙されて。
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アップルパイ(プロフ) - お話自体も泣けるしあとがきで追い討ちかけてきた…最高すぎる作品です…‼︎ (2月28日 22時) (
レス) @page50 id: 0ce3ef1535 (このIDを非表示/違反報告)
ミキ(プロフ) - この話凄く好きです！最後の方泣きそうになりました笑他の作品も読んでみたいなって思いました！ (2月3日 6時) (レス) @page50 id: 8f0b2947d1 (このIDを非表示/違反報告)
ロイ - すんごくよかったです！ワンピースの作品を読んだのは初めてなんですけど、面白かったです！夢主ちゃんの優しいところがすごく好きです！ありがとうございます！ (9月2日 12時) (レス) @page50 id: 97a54b5f8a (このIDを非表示/違反報告)
ゆきの(プロフ) - 何年も前に読んだこの作品の内容をふと思い出して、必死に検索し続けてようやく再会出来ました。最後に読んでからこんなに年月が経っているのに、また読みたいと思わせてくれるような作品を作ってくれて本当にありがとうございます (8月7日 0時) (レス) @page50 id: 0f8f6ed9fd (このIDを非表示/違反報告)
いぶき(プロフ) - 凄く感動しました、エースとオヤジを生存させてくれてありがとうございます (2023年3月23日 7時) (レス) id: d33577c241 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちチーズ
| 作成日時：2018年2月3日 9時
