自分を棄て。 ページ24
『……では、お話しすることはなにもありません。』
だからといって、はいそうですかとエースを諦めるわけにはいかないのだ。エースは、白ひげ海賊団で明るく笑ってるのが似合う。インペルダウンなんかにいるべきじゃない。
「舐めとんのかァ…」
サカズキさんの腕がドロリと溶けた。マグマみたいなそれに、一瞬ぎょっとする。
『え、大丈夫ですか……あぁ、悪魔の実とやらですか。』
今度はサカズキさんが不可解なものを見る目でこちらを見てくる番だった。
いや、人の腕が溶けたら相手が誰だろうと反射的に心配になるもんだってば。私の世界では悪魔の実なんてビックリなもの無いんだから。
なんとも言い難い空気が部屋に流れる。
それを破ったのは、いままで傍観に徹していた黄色いひと。
「サカズキ落ち着きなよォ〜〜……今日のところは一旦休ませたらどうだいィ〜…？さっきから顔色悪いよォ〜……」
そうだな、と元帥さんが頷いた。
その言葉にぺた、と頬を触ろうとしてじゃらりと鎖が鳴った。ずっと船の上で寝ていたし食事は死なないための最小限だったし、自分でも痩せたのは分かる。そこら辺が原因かな。あとエースのことを聞いたから。
「今日は休むといい。また、話は今度。……クザン、部屋まで案内してやれ。」
「はぁーい」
ああ、後回しにしたな、と直感的に察した。
元帥さんがクザンさんに向かって鍵を放り投げ、それを片手でキャッチしたクザンさんに「いこうか」と言われ歩き出そうとすると、後ろから声が掛かった。
「鞄の中を検証させてもらうがいいかね？」
鞄の中なんて、教科書と筆箱と携帯くらいしか……携帯にいたっちゃ電源切ってるし付け方分からんだろう。
『駄目……っていってもするでしょう。勝手にどうぞ。』
いちいち許可とらなきゃいいのに。
きっと元帥さんは、普通に接していたらいい人なんだろう。だけど、「エースが海軍に捕えられた」という事実がある限り…ティーチさんのせいだと分かっていても、ここの人達のことを、非難的な目で見てしまうのだろう。
自分でも我儘な子供みたいな態度だと分かってる。
だけど、なんかもう気持ちを抑えて取り繕う必要性を感じないの。うーん……なんて言えばしっくりくるかな。
( あぁ、きっとこれは自暴自棄。)
死にたいのに死ねない。大切な人が私のせいで苦しんでる。
『ごめんなさい』
誰に向けるでもなくポツリと呟いた言葉は、冷たい床に消えていった。
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アップルパイ(プロフ) - お話自体も泣けるしあとがきで追い討ちかけてきた…最高すぎる作品です…‼︎ (2月28日 22時) (
レス) @page50 id: 0ce3ef1535 (このIDを非表示/違反報告)
ミキ(プロフ) - この話凄く好きです！最後の方泣きそうになりました笑他の作品も読んでみたいなって思いました！ (2月3日 6時) (レス) @page50 id: 8f0b2947d1 (このIDを非表示/違反報告)
ロイ - すんごくよかったです！ワンピースの作品を読んだのは初めてなんですけど、面白かったです！夢主ちゃんの優しいところがすごく好きです！ありがとうございます！ (9月2日 12時) (レス) @page50 id: 97a54b5f8a (このIDを非表示/違反報告)
ゆきの(プロフ) - 何年も前に読んだこの作品の内容をふと思い出して、必死に検索し続けてようやく再会出来ました。最後に読んでからこんなに年月が経っているのに、また読みたいと思わせてくれるような作品を作ってくれて本当にありがとうございます (8月7日 0時) (レス) @page50 id: 0f8f6ed9fd (このIDを非表示/違反報告)
いぶき(プロフ) - 凄く感動しました、エースとオヤジを生存させてくれてありがとうございます (2023年3月23日 7時) (レス) id: d33577c241 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちチーズ
| 作成日時：2018年2月3日 9時
